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再会(イチカ編)
イチカは目の前に掲げた水着を見てため息をついた。
ふと窓の外を見ると、澄んだ空に月が輝いている。
雨は…降りそうにないなぁ。
念のため、スマホで確認するが、天気予報は晴れ。
明日も夏日です。水分補給を怠らないように。
…だよねぇ。
明日は同窓会がてら、高校の同級生達と海水浴に行く。
女子だけのつもりでいたら、仲の良かったグループの男どもも誘ったと聞かされたのが、一時間前。
ナンパ回数を競う、なんて、半分冗談だった。
友人の中には彼氏持ちもいるし、盛り上がるための口実だった。
だから、水着はなるべくエロいものを選ぶこと!
なんていう提案をして、イチカとしてはかなり冒険したデザインのものを選んだのだ。
「アイツらが一緒となれば、話は別だよ…」
こんなイケイケな水着は見せられない。
恥ずかしすぎる…。
イチカは上に羽織るTシャツを探すべくタンスを探る。
しかし、イチカは帰省中なのだ。
タンスの中は殆どが三年前、高校生の時に着ていたダサいものしかない。
仕方なく、まだマシと思われるものを引っ張りだしてビーチバッグに突っ込んだ。
「絶対、からかわれる…」
イチカの頭に浮かぶのは、明日来る予定のメンバーの一人、天下原(あまがはら)通称テンラだ。
テンラとは同じ陸上部で、顔を会わせれば憎まれ口を叩く間柄だった。
しかし、イチカは、密かに想いを募らせていた。
高二の夏、夏休み前に勇気をだして告白しようと決意し、テンラの教室に向かったその途中で、可愛い下級生と寄り添いながら歩いてきたテンラとばったり遭遇した。
「は?テンラ、もしかして彼女できた?」
思いきって訊ねた問いを、テンラは否定しなかった。
「おう」
ポーカーフェイスを保ちきれず、眼鏡を押し上げて照れくさそうに答えるテンラ。
「はぁ?くっそ生意気!」
イチカはテンラに肩パンし、
「良かったじゃん、お幸せにぃ」
すれ違い様に背中を思い切り叩いて去った。
「いてぇわ!ゴリラ!」
背後から聞こえる声には振り返れなかった。
しかし、それからもテンラとの関係は変わらなかった。
イチカは友達で居続けた。
彼女についての相談にまで乗ってやった。
そうやって、切ない恋心を抱えて過ごした高校時代だったが、さすがに三年も経てばイチカもあの頃のままではない。
短い間だったが、彼氏と呼ばれる存在も居たし、お化粧やお洒落、お酒も覚えたし。
しかし、何となくテンラに会うことを避けていたのも事実だ。
帰省しても会うのは女友達だけ。
集まりに誘われても、もっともらしい理由をつけて断っていた。
しかし、今回は逃げられない。
イチカが言い出しっぺだし、車も出す約束だ。
(仕方無い…覚悟を決めよう…なんとかなるでしょ)
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