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雪降れば
ひらり、ひらりと雪が舞う、寒い冬の日であった。君は白い息を吐きながら、ふっと、僕に言う。
別れを告げて去っていく君の背中を、僕は何の言い訳も出来ないまま、ただ、見送ったのだ。
あれからもう、何度目の冬を迎えただろうか。どれだけの年月が過ぎても、僕はぐずぐずと君を忘れられないで、今でも心に残し続けている。
今更のように思い出すのが、君と初めて出会った日だ。その日も、あの時と同じように雪が舞い踊っていた。両の頬を寒さで赤く染めながら、君は笑っていたんだ。
いつから僕たちは、互いに寄り添うこともしないまま過ごしていたのだろう。もし、もっと早くに気づけていたら、変わっていたのだろうか。
いや、違う。僕は気づいていたはずだ。あの、雪のように白い肌の、その頬に、悲しみの涙が一雫、流れた跡がついているのを。気づいていて、逃げたのだ。僕は甘えていた。
外は、相変わらず雪が降っている。月も見えない暗い空から、しんしんと、降り積もっていく。
このまま降り続けば、夜明けまでには全てがまっさらになるだろう。どうせなら、君と過ごした日々の思い出も全て、一緒にこの雪に覆われて、まっさらになってはくれないだろうか。そして、いつまでも情けない僕に、新しい朝を、見せてはくれないだろうか。
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