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第七話 先輩は小さな村での怪異を語る
三年二組の五十嵐透矢だ、よろしくな!
緑谷とは同じクラスでな、人数が全然足りないって聞いて混ぜてもらったんだけど、思ったより集まってよかったな。
えーと、とりあえず幽霊の話とか、ぶきみな話をする会ってことだっけか。
あー、だいじょうぶだ、任せろ! 昔、怪談の気がなくてこの話をしたら、普通にきみ悪がられたからなぁ。
これは、オレが昔、ここからかなり離れた山奥の小さな村で暮らしていた時の話だ。
え? あー、オレ、出身はこの辺だぜ? ただ一時期、オフクロが入院してて、その間だけ伯父のところに預けられてたんだよ。
母方の伯父で、その村で医院開いててさ。わりと名士? ってやつだったのかな。
そのせいか、学校でもわりーと普通にやってけて、伯父さんには感謝しかないな。
ほら、山奥の小さな村っていうと閉鎖的な場所ってイメージあるじゃん?
場所によっては本当に思い込みなんだろうけどさ、そこについてはまちがってなかったな。
なにも、イジメられはしないぜ? ただ、けっこう浮いちゃうんだよな、クラスでも。
あー、でもよそ者だからって訳でもないのかな。なんか村の中で古い家でも、浮いてるヤツは浮いてたしなぁ。
で、その村がだな。ちょっと変わった村だったんだよ。
死んだヤツがさ、次の日にその辺りを歩いてたりするの。なかなかスゴクね?
そうだろ、そうだろ。みんな、驚くよな、うんうん。
え? 説明が足りない?
あー、お前……えーと、名前出てこなくて悪いけど、お前さっきから他のヤツの話にケチばっかりつけてどうかと思うぞ。
三年同士ならともかく、一年や二年は可哀想だろ。言い返すにしたって限度があるじゃんか。
え、ここでダメなの、オレなのっ? ……なっとくいかねー……
わかったよ、もっと説明すればいいんだろ。
オレが引っ越してから少しした頃からなぁ。近所に住んでいたおじいちゃんのところの、一番下の息子さんが亡くなったんだって、葬式あげてたんだよ。
ああいう村だからなのか、そこならでは、なのかは分からないけどさ、葬式がある家の前を通りかかると、子供だとおまんじゅうがもらえたんだ。だから同じ学校のヤツらと何人かで行ってさ、まんじゅうをもらったんだよな。
だから、その家で葬式があったことは間違いないはずなんだけど。
次の日さ、その家から若い男の人が出てくるのを見たんだよ。
オレ、その時はおじいちゃんの家の、他の息子さんだと思ったんだよ。いえいっていうんだっけか、あの写真にそっくりだったけど、兄弟だったら顔が似ててもふしぎはないだろ?
……でもさ、伯父さんにきくと、妙な顔をされてさ。
その家って息子さんが、亡くなった人を入れて、二人だけなんだけど、もう一人は一番上の息子さんだからもうオジサンなんだよな。少なくとも、死んだ人とまちがうレベルの容姿していないんだって。
じゃあ、他の親類かなぁ、と何気なく言ったんだけど、それも否定された。
他にいる、三人の娘さんはいかにも女性って見た目だし、なまじ小さい村だから親類関係は割れてて、それっぽい男の人はいないんだって。
そういうことがさ、オレがいた間に二、三回あって。
学校で仲良くしてたヤツに、この話をしたんだよね。そうしたら、ソイツが言ったんだよ。何でもないことのように。
そりゃ、別にふしぎでも何でもない。
ここは死者が住む村なんだから、ってね。
……とりあえず、この話はここでおしまいだ。
村での話は他にもあるけど、それを全部話しちまったら、他の話する時に困るからな。
ああ、ソイツの話も、後でするさ。
ひょっとしたら、村の中で一番変だったのはソイツだったのかもなぁ……
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