わかっていても

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わかっていても

「……ふざけんなよ…」 「俺に復讐でもしたつもりか? 残念だったな。なんならお前は俺にマシな夜の相手と、財界人の弱みって札を与えてくれたんだよ。お礼にキスの一つもしてやりたい気分だ」  底の見えない笑みに冷える背中。  ただ、その冷たさに、沸いていた脳が冷えた。 「……のっとっ」 「うっ」  全身に反動をつけ、脚を持ち上げて、清澄の首に引っかけた。  そしてそのままの力を利用し、清澄の体を後ろに引き倒すと、掴んだ脚を捻らせ、うつぶせの姿勢にさせてから、背にまたがり、腕をグッと後ろに反らさせて動きを封じた。 「脚が、な……長いってのを、取り柄に、追加しといて、もらえる?」  くそ。  せっかくのセリフも息が上がってスマートさにかけるわ。 「寝技は得意なんだ」 「だろうな。絆も悦んでるだろう? あいつは淫乱だからな。知ってるか? あいつが乳首を噛むと悦ぶの。それと、突っ込んですぐの浅いとこをしつこく捏ねたら……」 「うるさいっ!! だまれっ!!」 「ぐっ……」  腕をひしいで、折らずにいられたのは、百合を使って俺がやろうとしたことを逆にやられたって実感があったから。  最低にも、まだ底があるってくらい、自分に虫唾が走ったから。 「いい声で啼くぞ? ……ああ、当然知ってるか? 僭越だったな」  知るか。  知るか知るか知るか。 「あいにく俺は、あいつのダチでね。精神の繋がりってやつ?」 「なるほど。相手にされない逆恨みってやつか」  カッとするべきじゃない。  同じ手を2回も食うなんて馬鹿すぎるって、そんなのは、わかってた。  わかっては、いたさ。
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