恋とは無縁

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恋とは無縁

「ちょっと、こっち見ろっ! 山登っ!」 「やだ」  毛布に手をかけられたのに、体重をかけてひきはがされることを阻止する。 「おまえ、何考えてんだよ! 準ミスってきよ……」 「かわいい女の子はみんな俺の恋人なのっ!! 意味なんてねえしっ」  絆の口からあの呪われた名前が口に出されるのを阻止するのに、口角から何からが切れてて開けたくない口を開けたもんだから、不出来なロボットみたいな話し方になる。  馬鹿にされてるとでも解釈したのか、絆の毛布に込められる力が2割増しになった。 「そのむかつくしゃべり方やめろっ! モノマネかなんかしんないけど、元キャラ知らんっ!」 「俺だって知らんわっ」 「ああもうっ! どうでもいいから、顔を出せっ!」 「きゃーいやーえっちーっ!」 「ふざけんなっ!」  結構真剣な怒りの声と同時に、横っ腹にかかる負荷。 「ぐっ……」  業を煮やした絆が俺に脚をかけて毛布をひきはがそうとしたんだけど、清澄にボコボコにされたあとへの、その衝撃たるや、声も出ない。 「んな手にかかると思うなよっ」  演技とでも思ったんだろう、痛みに動けないどころかロクに息もできない体から、無体にもひきはがされる毛布。 「ぅうっ」  グルンと体が転がったことで顔面を擦ることになり顔面押さえて呻く俺を見て、異変に気づいたらしい絆が、強奪の手を止めた。 「山登?……え…ちょっと、手、どけろ」  訝しさと心配の混ざる声。 「いやっ。こんな姿みられたら、100年の恋も冷めちゃうっ!」 「恋してないから冷めない。心配すんな」  グサリ。  鋭利な刃物を振りかぶった絆が、俺の胸を突き刺す。  くそエゲつねー。  物理的に加えられた傷の痛みなんて屁でもねえな。  えーえー。どうせね。俺はオトモダチですから? そりゃ恋なんて無縁でしょうよ。
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