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残された連絡先
「山登っ」
「絆にはっ!!………絆には関係ない」
大口あけて声だしたら、切れた口の端に激痛が走ってつい雑な口調になってしまう。
とたん、絆の顔が泣きそうに歪んだ。
ああ、くそ。
そんな顔させたいんじゃないのに。
「……わかった」
絆が視線を落としてポツリと呟く。
俺の手を掴んでた手が体ごと離れてしまうのがちょっとさみしいけど、この話がここで終わるならよしとしよう。
「本人に聞くから、いい」
「はあ?」
ポケットからスマホを取り出す絆。
「ちょ、絆っ!何やってんだっ……っつっ」
慌てて起きあがったら、いろんな場所が軋んで痛んで、それこそブロックみたいにバラバラにされたんじゃないかって思った。
「山登には関係ない。だろ?」
今にもタップしようと、怒ったような、拗ねたような、挑むような顔してこっちを見る絆。
そんな顔も可愛いな、なんて思ったりしたけど、まあ思ってる場合では、当然ない。
「つまんない仕返しすんなっ!貸せ、それっ」
「は?なんで?」
「なんでもくそもないのっ!つか、何でまだ連絡先持ってんだよっ」
絆が未だに清澄の連絡先を大事に保存してるのかと思うと、腹が立って体の痛みが半減した気がした。
アドレナリンってやつのせいか?バラバラになってたブロックが組み合わされて、それにはギアまでついたもんだから、ベッドに浅く腰をおろしていた絆のスマホを奪おうと、手を伸ばすことができた。
ただ、所詮ブロック。
力の加減ができず勢いがつきすぎて、よけようとした絆ごと、バランスをくずしてベッドの下に落ちてしまった。
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