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刎頸の友に
「絆……」
「ん?」
めまいがするほど近い距離。
全神経が、絆に向かう。
「おまえ、趣味悪い……」
絆は瞬間瞠目して、くしゃんと、笑った。
「だな」
けど俺を選べば……ああ、趣味悪いままか。
「準ミス、ヨかった?」
「は?何が?」
「シたんだろ?」
なんちゅう質問。
好きな奴の上にのしかかってるこの状況で、与えられる言葉が、それだとか。
おんなじ部屋で違う女とセックスしあったことあるんだから、まあ、ありえる質問だけどさ。
「準ミスがヨかったんじゃない。イい思いをさせたのは、俺」
それに乗っかる俺も俺だけど。
「ほんと、バカ」
俺の体に伝わる苦笑の振動と半泣きの笑顔に、胸が締め付けられる。
やばい。
安全装置が、外れそう。
このまま組み敷いて、歓喜に泣かせたい。
「……ずな…」
何発だって打ちこめる。
弾切れなんて、ありえないほど──
微苦笑を湛えたその赤い唇に、思わず、半分無意識に唇をよせかけたその時だった。
「ありがとな、山登」
「っうぐ…!!!」
ギュッと、首を羽交い締めにされた。
色気もクソもない、いっそレスリングのような抱擁に、かちりと安全装置が戻される。
「……準ミスと…えっちしたこと?」
「違うだろ、あほ」
それ以上、絆は何も言わなかったから、俺から絆の望む言葉を口にした。
「刎頸の友、だから…な。結果はともわれ、心意気をかってくれて何よりだわ」
お互いに首を斬られても後悔しないような仲の友。
絆が俺に望むのは、そういう関係だ。
わかってる。
けど、ごめんな、絆。
俺のはそんな高尚なもんじゃない。
おまえを抱きたい。
そんな下世話な感情だ。
頭ん中じゃ、おまえを犯し続ける。
清澄や、ほかの奴らにも嫉妬し続ける。
けど、ほんとのカオは見せないように仮面はかぶっとくから。
だから、俺を、おまえから追い出さないでくれ。
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