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急転
黄色い太陽に目が慣れたのは、ギャルズと別れ、始発に乗ってようやく絆の家の近くまでたどり着いた頃だった。
「あー腰いてえ。早く風呂入りてぇ」
腰を押さえながら首を回す絆の仕草は なかなかに生々しい。
そういう俺はといえば腰どころか、あちこち痛い。
初めての行為に、無理な姿勢してたせいだ。
そんでなんつうか、膝が痛い。
腰を振る際一緒に擦れて、ヒリヒリしてる。
なんとなく、鬱陶しい俺の胸のヒリつきに似てる…かな?
はあぁ…。
根っからの女好きの絆と、なんてぇことはもう諦めてたけど……せめてもうちょっとロマンチックな筆おろしが良かったわ……。
あー、俺もう魔法使いにはなれないんだなぁ。
「つかさ、あの子、すげえな。初めて会った男の洗ってないモノくわえるとか」
「酔ってたからなぁ」
「酔ってても、んな、好きでもないヤローのなんて、俺、無理だもん」
ああ……。
けど、俺、絆のなら、平気……かも。
「……は。お前がくわえちゃダメだろ…」
言われて、一般的には男が男のモンくわえるってシチュエーションはありえないんだって気づいて、慌てごまかす。
俺だって”男でヌいてる”って特殊な性癖と心の折り合いを付けるのに、何年も要したわけだが、その歳月は、そういう常識的なことをアヤフヤにしてるみたいだ。
「ちゃうっ! 例えばの話な!? だって、オシッコでるとこだぞ?」
「おれも女の舐めましたけど何か?」
尖らせた赤い舌を出して上下にチロチロ動かしながら、挑発的な視線を寄越す絆。
思わず目をそらす。
……なんつう早朝に似つかわしくないエロさ。
生々しいから止めてくれ……。
「……そうですか。デビュー戦の俺にはまだ無理でした」
洋服のタグが刺激してくるみたいにチクチクする心の不快感。
けどそれ以上に、突き出されてた舌のエロさに、若い俺の股間はムズ痒そうにぐずりはじめた。
「そのうち自分からシたくなるって」
俺の心境そっちのけですっかり経験豊富な者のコメントを吐き出した絆が、先に角を曲がる。
「わっ」
何気について行ってた俺は、いきなり立ち止まった絆の体にぶつかってしまった。
「おい、何で急に止ま……」
すぐ目の前にある絆の体は固まって、その視線の先に認めただろうモノとの間に孕んだ空気に、なんか俺まで言葉を継げなくなった。
「……キヨ…スミさん」
微かに零れた絆の声をかき消すように、キヨスミと呼ばれた男が強い口調でその名前を呼ぶ。
「絆っ、そいつ誰だ」
不機嫌さを隠そうなんて気はさらさらない、それどころか俺を射殺さんばかりの強い目で俺を睨む男。
絆は弾かれたように俺を振り仰ぐと、まるで俺を隠そうとでもするみたいに、元来た曲がり角に俺の体を押し返した。
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