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ザ・ホワイトカラー
「お疲れー!」
アンコールを終え、化粧のせいもあってお上品に汗を拭いてた俺たちの元へ、店長が満面の笑顔で現れた。
「打ち上げやろう! 打ち上げっ! 時間まだ早いし、大丈夫だろ?」
ライブが始まったのが昼だから、時間的にはまだ夕方。
「場所は?」
「高校生の君らは外だと飲めんでしょう!? ここでーすっ!」
「マジで?」
「いいの?」
「パパ様に叱られない?」
「金ないし」
「俺の服、どこっすか?」
それぞれの問いに、店長は両手をあげ、慇懃に頷いた。
「オーナーには言わなきゃ、ばれない。そして費用はっ! なんと彼、加治君が出してくださいます!! はいパチパチー!」
まあまあ二枚目の加治さんは店長の友達で、まだ20代半ばにして新鋭IT企業の幹部だそうな。
樋口の情報によると、絵に描いたようなホワイトカラーの彼はいわゆるお金持ちで、今日出演したガールズバンドの中に彼女が居るらしい。
その兼ね合いで今日のイベントが行われたもんだから、その費用は加治さん持ちで、樋口のとこのバンドも使用料払ってないそうな。
ビバ金持ち! 万歳タダ酒!!
「マジで?」
「あーっす」
「ゴチになりますっ」
「らっきー」
「いや、だから、俺の服は?」
店長から教えられたのはトマの服のありかではなく、加治さんの彼女が俺らのファンだったから彼女のために俺らとの一席を設けてやるってことだった。
「彼女さん愛されてるなぁ」
俺の言葉に、加治さんは笑顔を見せて俺らを見まわした。
「かっこいい男の子ばっかりのバンドだと思ってたから、ちょっとヤキモチ焼いてたんだけどね。実際は美人ばっかりのバンドだったから俺の方が目の保養させてもらったよ」
なんとも。
スマートな仕草。
スマートな口調。
気がついた。
むかつく某ジークンドーエリート然り。
自称ロッカーの俺は、ザ・ホワイトカラーが苦手だ。
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