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アイスチョコバナナ
罰ゲームで、服を隠されててナース姿のままのトマと切れたつまみを買いに行くことになったんだけど、どうしても嫌だとワガママをぬかすトマに、これまたJKのままの絆が代理を申し出た。
ブーイングはあったけど、流石に金髪のエロナースはマズいだろってマトモな理由で納得させて、内心では絆とのデートにウキウキだ。
ライブのテンションを引きずり、少々アルコールが入って悪乗りした絆と、手を繋いで目的の店まで練り歩く。
絆の化粧はほとんど落ちかけてたんだけど、誰も男と気づかないどころか、すれ違い様に「あの子激美少女」なんて言われたのも指の数じゃ足らない程だった。
当然俺はもうウィッグもつけてないし、化粧も落としてたから、完全なカップルだ。
可愛い彼女に得意満面。
けど。
最初こそ鼻高々って気分だったのが、そのうちどんどん腹立たしくなってくるのは恋する男心。
こらこら、見るなよ。
いやらしい目で、俺の絆を見るんじゃないっ!
なのに当の本人はと言えば。
「山登ー! アイスっ! アイス買うっ」
なんて指差したスタンド販売のアイス屋に、ロクでもないことをほざくもんだと繋いだ手を引っ張った。
「アホか! 我慢しろ!」
「はあ? 何でっ!」
「おまっ! どんな格好してるか忘れてんのか!? 一応思春期男子なら察しろよ」
「あーあーあー。なるほど」
なるほどじゃねえわっ!
「あ、ちょっ! 絆っ」
「アイスバナナチョコ一つっ」
駆け出した絆の注文の内容に焦る俺。
「こらっ」
「サービスサービス」
「せんでよろしいっ! お父さんは許さないぞっ!」
俺の制止を無視して件の代物を入手した絆が、くるりと俺に振り返る。
長い髪が踊るように跳ねた。
酔いで上気した頬。カールさせた睫の下の瞳が、上目遣いで俺を見上げる。
「……パパぁ、怒っちゃ…や」
ドキューン!
ぐうっ。
殺されるっ!
可愛い過ぎる姿と舌ったらずな口調が、女の子にしては低すぎる声って唯一の違和感すらどっかの彼方へ追いやった。
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