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特殊性癖カップル
「山登くーん、だーい好きっ」
加治さんの彼女が、とにかく俺から離れない。
むちむち系年上美女の彼女。
当たる胸は豊満で、さっき女同士で揉み合ってる姿はなかなか下半身にクる絵面ではあったけど、いかんせん彼氏が目の前にいるんじゃ、どうにも落ち着かない。いや、いっそ針の筵だ。
絆とチューした奴となんか目も合わせたくないってとこだったけど、そんなこと言ってたら過半数の奴らと目も合わせられないってくらい、絆はキスの回にあたってたから、とりあえずヘルプの視線を加治さんに送る。
あくまでも俺の意志ではありませんよ的アピールだ。
そしたら加治さんは目の前にグラスを差し上げ、なんでか笑顔でグッジョブ。
ようわからん。
でもって彼女の番号が呼ばれ、悩殺ポーズ披露、なんて命令受けてる間に、彼がスイっと寄ってきた。
「彼女、君の熱烈なファンらしくて」
「……ああ、どうも。ありがたいことで」
「どう?」
俺にしか聞こえないような声。
意味が、わからなかったとしても、しょうがない”どう?”。
「はい?」
「彼女、抱いてやってくれない?」
「は?」
「君が嫌じゃなければ」
この人、何言ってんだろ……。
「えーと……」
整った顔が、好色な笑みに歪んだ。
「やきもち焼き……的な方、では?」
「ああ。そうだな。そうだと思うよ」
……はい?
「だからさ、燃えるんだ。他の男に抱かれたって思ったら、たまらなく腹が立って……最高のセックスができる。そして君は彼女の憧れの対象であるわけだから、それは、今までの比じゃない。君の話は色々聞いてるよ。カサノバくん。来るもの拒まず、だろ? 彼女の希望を叶えてやってくれ」
え───と。
こんな世界も、あるんだなぁ……。
それがもう、とりあえずの正直な感想。
俺には絶対わからん。
俺の野望は、絆を誰にも触れされないようにすることだもん。
「変な奴だと思ってるだろ? マンネリ防止だよ。お互い愛し合ってる。でも、二人だけの世界のセックスには直ぐに飽きがくる。嫉妬は最高の媚薬だよ」
「はは……寛大な、お言葉で」
「考えといてくれ」
グラスを片手に、店長の方へ戻る加治さん。
入れ違いのように戻ってきた彼女が速攻で俺の腕に絡みつく。
「せっかく山登くん悩殺しようとしたのにぃ、見てくれてなかったでしょっ? ね、加治くんと何話してたの?」
潤んだ目で見上げてくる彼女。
へへへ変態カップルだっ!!!
ちょ、誰か……どうにかしてくれっ。
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