飢えを満たすキス

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飢えを満たすキス

 絆とのキスの情欲にまかせて、事務室のソファーの上で加治さんの彼女を抱いた。  久しぶりの、しかも肉食系女子とのセックスはなかなかの疲労感を俺に与え、スワッピングの良さについて語る彼女の声が眠りを誘い、絆へのやるせない気持ちに沈むことなくまどろむことができた。  朝まで眠ることができてたらよかったのに。  俺は、喉の渇きに目が覚ましてしまった。  彼女の捲れ上がったスカートを戻し、常備されてる膝掛けをかけてやって、水を飲もうと非常灯のみが光源の暗いフロアへ踏み込む。  目をしばたかせ、なんとか薄い灯りに浮かぶペットボトルのフォルムを手に取った。  喉を湿らせながら、あっちこっちのイスに横たわる人影を見回して絆の影を探すけど、広いフロアは奥まで光が届かず、ため息一つ。  まあ、居たからって、何ができるわけでもないんだけどさ。  もしかまだスカートでいて、さっきの彼女みたいに捲れてたらいけないな、とか?  あーあ……。  また絆とキスしてもうた。  酔ってたから、歯止めがきかなかったんだよな。  しかも女の子どころか、店長とも加地ともキスしてたから、かなりのヤキモチ入ってたし。  基本的に飲ませたら、緩いんだよ、あいつは。  なのに──キスなんて誰とでもするくせに、俺とやるのは嫌がる。  あの、例の、友達だからとかって変わらない理由でさ。  そのくせアイスチョコバナナなんて食って俺を振り回すし。  どうしろってんだ。  俺とキスするってわかった時の、酔いの覚めたような顔。  妙なこだわりと拒絶。  飢えてるときに待つカップラーメンの三分は長いのに、飢えを満たすキスの三分は驚くほど短かった。  三分のベロチュー。  背中に回された手の重みが、忘れられない。  ずっと拒絶されるのもツラいけど、あんなふうに受け入れられた後に現実に戻られるのも、ツラいもんだ。    
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