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オムライス
「アイスは飯の後ですよ、絆ちゃん」
泣く泣く絆の体を離し、ソファーから立ちあがると、冷蔵庫の中をのぞく。
そして、たまに来る俺が買い込んだ食材の中から、使いかけの玉ねぎとピーマンとソーセージと卵を取り出した。
「牛乳は?……っと重いな、おい」
ソファーに寝っ転がってるはずの絆を振り返ったとたん、ずしりと背中に重みを感じた。
「飲んだ!」
耳元で聞こえる声と、ワインの香り。
「昼飯は牛乳?」
ちょっとした冗談で聞いたけど、背中に登ってきた絆は、あいも変わらす俺の肩口に額をすりつけながら頷いた。
「そ」
「はぁぁ。ミルクが主食って……本気の赤ちゃんじゃねえか。卵、ちょっと固くなるけどいい?」
こいつはコーヒーなんて大人な飲み物は飲まないから、パウダーミルクなんてものも当然ない。
「えー……。ふわふわがいいのにぃ」
俺は料理上手なわけじゃない。
ただ、あんまりにも食に関心のない絆に食べさせるためだけに、それまで調理実習でしか持ったことのなかった包丁を握るようになり、バイト先のダイニングキッチンの厨房にも入り浸るようになった。
床上手なとこを実践できないから料理でってわけじゃないけど、飯を作ってやるって理由があれば絆のとこに通いやすいからだ。
とはいえ付け焼刃。オムライスを上手に包むなんてできないから、完全に火の通るまえの、できそこないのスクランブルエッグみたいなのをケチャップご飯の上に乗っけるだけ。
でも絆はそっちのが好きだというから、俺の中でオムライスは巻かないのがポピュラーなものになった。
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