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不協和音
「あいつに何言われたんだよ?」
受話器の向こうに感じる絆あからさまな動揺。
黒いドロッとした何かが足元から俺を飲み込んでく。
「……先輩は、関係ない」
「嘘つけ。だって今までテストだからって関係なかったろっ」
「そ……高校と中学は、違うんだよっ」
ちょっと逆ギレっぽい苛立ちを含んだ絆の声に、黒いドロドロがどんどん這い上がって、俺は真っ黒になっていく。
「ギターの練習なんて、してる暇ないっ」
先輩に取り縋ってた姿が俺の知ってる絆と重ならなくて、けど記憶にはバッチリ焼き付いてて、それが苛立ちの炎に勢いをつけ、俺の体の黒いドロドロも一緒に、燃え上がる。
「あいつに、連む相手は選べとでも言われたのか?は。俺といるの見て、あいつ怒ってたもんな?」
「そんなんじゃ…っ」
口に出すほど興奮が脳を熱くさせていくから、ついつい、怒りにまかせて思ってもない言葉を吐き出してしまう。
「どうせ? 俺はお前んとこ入れなかった落ちこぼれだからそりゃ、暇だわ」
「そんなこと言ってねえしっ」
「言ってるよっ! ははっ。そうだよな。優秀な進学校に通う優秀な学生さんは、俺らみたいなの相手にしてらんないよな。もういいよっ! 大好きな大好きなエリートの先輩と、お手手繋いで仲良くお勉強してろっ」
一気に吐き出して、スマホをベッドの上に投げつけた。
まだ、地面に投げないほどの冷静さがあったんだってポッカリと思ったけど、そっから先、また震えると思ってたスマホはただジッとそこにあって、なんの着信も知らせないその無機物に、俺は頭のてっぺんまで、黒く塗りつぶされた。
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