突然のバイオレンス

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突然のバイオレンス

  「やぁ? なんか、電話かかってきてさ、すげえ顔して奥に走って行ったけど」 「すげえ顔?」 「ああ。まじめな顔ってか……怒った顔?」  奥と言って示した視線は、ステージの上の幕の向こう。   控室に続いてるはずだ。  なんでまた?  「おっじゃまっ様っ!」  今日のこの会場はライブハウスではなく文化ホールだから、ステージの上では顔なじみの音響屋さんがセッティングに精を出してる。  それを横目に、買ってきたアイス入りの袋を手にぶら提げ、ステージ裏から続く控え室までの廊下に降り立ったときだった。  鈍い音と悲鳴。 「おいおい…っ」  廊下の全貌が目に入った瞬間、人に馬乗りになって拳を振り上げるその姿が一緒に飛び込んできて、慌てて駆け寄った。 「絆っ! 何やってんだっ! こらっ」 「離せっ!」  鼻血に顔を赤く染め、絆にのしかかられてるのは、頭のおかしなキョウがいたバンドのベース、オガだった。  とりあえず絆の体を羽交い絞めにして引きはがすけど、とにかく状況がつかめない。  そもそもオガはなかなか筋肉質の男らしい体をしてて、言っちゃなんだがギターより重いもんなんて持つことのない華奢な絆にいいように殴られてるってのも妙な気がするし……。 
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