弟分のオンナ

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弟分のオンナ

「なあ、オガ、おまえ、何やったんだ? おまえの口から説明してくれ」  トラバっていうのは、トマがギターとして入った同級生バンドで、正式にはTRACBUG。  最近大きめの箱で演れるようにはなったとはいえ、小林くんがトラバを格下っていったのには、まあ納得はする。  それくらいルチアは人気があるし、積み重ねてきたキャリアへの自負もあるだろう。  けど、それを正直に口にするルチアの気風ってのが俺は苦手だったから、ルチアの中で仲が良かったのは変わり者のキョウだけだった。  それでもオガは、ルチアの中じゃまだ気安い相手だった。 「こいつがキョウと一緒にトマのオンナ食ったんだっ」  頬を紅潮させ、今にも噛みつきそうな顔をした絆だったけど、俺が椅子に座った両肩を上から押さえてるから立ち上がることはできなくて、煩わしげに肩を揺らした。 「だから、絆は黙ってろって。オガ? キョウと一緒ってなんだ? 二人してレイプしたなんて話じゃねえだろうな?」  一瞬そんな最悪の想定が浮かぶ。  それは許さん。  俺は軽い人間じゃああるし女癖がいいかといわれれば一般的には最悪なんだろうけど、無理強いは絶対にありえない話で、レイプ犯は公開で同じ思いをすればいいとさえ思ってるくらいだ。  ただ、口に出してからキョウの呑気そうな表情を思い浮かべ、目の前で鼻にティッシュつっこんでうなだれてるオガみたら、それはない目だろうってすぐに思ったけど。 「……違う。……向こうから、ヤろうって、俺の家に、来たんだ……」  ぼそりと零れた声に力はないけど、その誤解だけはされたくないってのが伝わってきた。
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