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乱れた関係
「そいつとは、前にもヤッたことあったし、キョウと飲んでたから、そこそこ酔ってたし……まあ、いっかって。そんで、途中で、キョウも入ってきて……」
「トマのオンナだって知ってたんだろ!?」
「だから、黙ってろって。はい、これ。アイスやるから静かに食ってろ」
すっかり存在を忘れてた手首に通してたコンビニの袋から、カップアイスを出して絆に押し付ける。
絆は拗ねたように唇を尖らせると、不貞腐れた感マックスに椅子にふんぞり返って溶けかけたアイスに手を伸ばした。
「それ、知っててヤったわけ? しかも3P?」
「だよな? マキが泣くぞ。浮気もん」
鏡の前に置いてあったパイプいすに腰掛け、缶コーヒーを口に運んでた小林君がそんなチャチャを入れてくる。
マキ? 彼女いるのかよ。
意外だった。
俺の中でのオガはといえば、へんてこりんなキョウと仲がいいのに浮いた噂もない硬派な奴だと思ってたから。
俺は会議用テーブルの上に置いてあった、所有者不明のミネラルウォーターを開封してティッシュを湿めらすと、オガに血を拭うようにと差し出す。
「なかなか……トマのオンナも……アレな子だな…」
「くそビッチじゃねえか」
アイスにプラスチックのスプーンを突き刺すように、そんな言葉を吐きだす絆。
トマのオンナを食ったって──あれ? あの子? 聖女の? あの後まだトマと続いてたのか。
「……じゃぁ、キョウがトマの兄貴だって……」
小さく頭をさげて、濡れティッシュへの感謝を表してたオガは、そこで首を横に振った。
「知らなかったみたいだ。トーマ見て、パニくってた。………トーマは、最近年上の女作って遊んでたし、そいつも女に振られたばっかで……。だから、そういう、フリーな感じで付き合ってのかと思って……」
ん?
なんか今、不自然なセリフを耳にした気がするぞ。
「え?ちょ、オンナに振られた……のは───うん?」
オンナがオンナに?
え? 百合?
思わず絆を見たら、スプーン咥えて瞠目してる絆と目があった。
どうやら同じ疑問符を頭に浮かべたと思われる。
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