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カミングアウト
「ああ、俺、そいつがオンナに殴られて振られてるとこにちょうど居合わせて……けっこう凹んでて…前から目つけてたから、まあ、慰めついでにそん時……そういう関係になって……。
高校生の癖にやたら経験あるみたいで、それもあったから、つい扱いもそんな感じになって……。だからトーマもそういうつもりで付き合ってんかと思ったのに……」
「ちょいちょいちょい? いったん落ち着こう。トマのオンナの話してるんだよな、今?」
「ああ。知らなかったのか。そいつ、真正のゲイなんだ」
俺らの疑問が、小林さんのサラっとしたカミングアウトによって解消された。
硬派だと思ってたのは単に女を抱かないだけで、なかなか軟派な奴だったんじゃねえか。
思わず絆をオガから隠そうと立ちふさがったのに、また小林さんが爆弾を投下する。
「絆はオガの趣味じゃねえよな? オガの趣味はそんな少女趣味じゃなくて、しっとりお色気系の和風顔だもんな」
少女趣味で悪かったなっ。
絆は絆で自分をそんな風に揶揄されたにもかかわらずキレることがなかったのは、別のことに気持を持ってかれてたからなんだろう。
アイスのスプーンを口から外して、まるでそれが言葉の栓だったみたいに声を漏らした。
「……トマの相手……って…」
「ハルだよ。トラバのボーカル」
「「男!?」」
絆と仲良くハモったのが嬉しいなんて思いは、さすがにその時は浮かばなかった。
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