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買い言葉
「お前、ほんとキョウと血繋がってんの?」
売り言葉に買い言葉っていうのであってるのかどうかしらないけど、あの電話の後ですぐキョウに連絡を取って、弟に引き合わせてもらった。
キョウは平凡な見た目と裏腹になんというか、とにかく変わってる子供っぽい奴だったけど、弟は華やかな見た目とは違って静かで、大人びた奴だった。
「あのな、おとーと。誘われたんなら食っとけって」
「そんな」
「あれだぞ。ロッカーたるもの、童貞なんてさっさと卒業しとこうぜ」
言って俺も卒業したの最近だけど。
ただ卒業してからは、技術の向上に日々邁進してますよ。ええ。週末はお祭りですよ。
あれから1ヶ月。
絆から何の連絡も寄越されることはなくて、だからってこっちからすんのは、なんかプライドが赦さなくて、けど気持ちはズルズル引きずって、それこそやけっぱちみたいに女の子ひっかけて、セックスした。
うん。セックスは気持ちいい。
してる間はサルになれる。
でも……ただ、それだけ。
体が気持ちいい分、心が空虚になっていった。
なんでか。
そんなんわかってる。
おとーと君のギターは物足りないけど、上手い奴だったとしても、やっぱり足りないんだろう。
わかってる。
足りないんだ。
足りない。
俺の一部が、欠けてる。
だから俺はこんなに、虚しいのに。
絆は平気なんだ。
俺なんかいなくても。
絆の日々は、変わらない。
そんなん。
わかってる。
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