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俺だけに
「あ、その前にさぁ、近い日曜、空いてない? 系都の誕生日のプレゼント、まだ持ってってない」
泊まり込みのフェスに香水野郎じゃなくて俺を誘うこととか。
年の離れた妹にプレゼントを渡しに行くのに俺が一緒じゃないと行けないとか。
そういう”特別”をかき集めて、なんとかやってくから。
吹き溢れそうなときは、アンリママに愚痴聞いてもらうから。
だから、そうやって俺だけに甘えてろ。
「俺も、なんか買ってこうかなぁ。俺の嫁になるかも、だもんなぁ」
「はあ!?」
「お前の娘を嫁にもらうの見込み薄そうだからなぁ。パパじゃなくて、お兄ちゃんにするわ。呼んでみな? ほれ、お兄ちゃぁん、て」
「ふざけんなっ! おまえみたいなエアロ級の軽い野郎に可愛い糸都をやれるかっ!!」
「もう、なんでもいいわ。俺弟か妹欲しかったんだよ。とにかくちょっと、ここは一つ、可愛く”お兄ちゃん”って」
「なんでもいいってなんだっ!! ほんと適当っ」
「適当でもいいから、ちょ、頼む。お兄ちゃん大好きーって、ほれ」
「いーやーだっ!つか、俺のが年上だしなっ」
「一か月しか変わんねーじゃねえかっ!ほれ、絆ちゃん、照れてないで言ってごらん?ほれほ───」
「やかましい─────っ!!!!」
せめてもの至福のひと時が、大絶叫とともに開かれたドアによってぶち破られた。
「人が振られて凹んでるときに横でイチャイチャすんなっ!!!!!!」
そこには憤怒の表情を浮かべ、焼酎の瓶を片手に仁王立ちした姉ちゃんの姿。
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