酔っ払いガールズトーク

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酔っ払いガールズトーク

「へ!? は? や、ちがっ! 紗知姉っ!! これはっ」  正に騎乗位。  慌てて俺から降りようとする絆だったが、ものすごい勢いで飛び込んできた姉ちゃんに体を拘束された。 「わあああーーーんっ!! 絆ちゃあああああんっ」 「また振られたのかよ」 「うわああああん。なんで私は絆ちゃんみたいに可愛く生まれなかったのおおおおお」 「いや、紗知姉、俺、それ言われても悲しいんだけど」  うちの家系なんだろう。姉ちゃんは女にしてはデカい。そう、絆よりも、だ。 「今日ね、今日ね、得意先と、合同の飲み会だったんだけど、向こうの総務のキュリリン系女子が、あたしの靴みて、靴ごと履けるうー、とかぬかしたの!! そしたら、佐藤さんがっ、佐藤さんが……爆笑したのよおおおおぉぉぉ!! わあああぁん、好きだったのにぃぃぃ」 「はああ!? なんだ、その最低男っ!!! ありえないっ!!!」  姉ちゃんの足のサイズは26センチだ。  ま、絆と同じだわな。 「でしょ!? でしょ!? 酷いでしょ!???」 「うん。死刑だ、死刑っ!!!」  いわゆる外人モデル体型なんだけど、一般的な日本男児はデカい女を好まないようで、とにかく男に縁がない。   挙句に顔がキリっとしてるから、アンリママと姉ちゃん、どっちが元男? って聞かれたら、多分9割が姉ちゃんを指すだろうし、絆と姉ちゃん、どっちがオカマ? って聞かれたら、10割が姉ちゃんを指すだろう。 「紗知姉はその男にもったいないっ! そんな奴相手にすんなっ!! こんなイイ女なんだから、もっといい男がいるだろ!?」  俺の上で繰り広げられてる光景は、さながら”ニューハーフ”と”男の娘”とのガールズトークだ。 「ほんとに? ほんとにそう思う!?」 「や。とりあえず俺の上から退いてくれないかな……?」  全体重をかけてるわけでないにしろ、170センチ辺りの二人の重さは、うざい。 「思うっ! よしっ! 今日は飲もうっ!!」 「うん。飲もう飲もうっ!」 「あ、いや、ちょっと待て。酒盛りすんなら余所でやれ。俺マジで寝ないと明日が……」  「はあ!? ほんと冷たい男ねっ!! 絆ちゃん、こんな奴のどこがいいの!? 絆ちゃんこそもっといい人いるでしょう!?」 「そうだっ! 山登酷いんだった!! ちょっと! 紗知姉聞いてくれる!? こいつ実験だ、バイトだって言ってさあ、俺のこと一か月も放置すんだよ!? なくない!?」 「はあああ? 山登のくせに生意気な!!!」 「なんのこっちゃ……」  酔っ払いにからまれた俺が翌日の講義に遅れなかったのは、ひとえに横で眠った絆に悶々としたからなわけで、その日の俺はそれはそれは散々だったから。  ぐっすり眠ってる絆の唇に唇を合わせたくらいのセクハラは、神様も許してくれると信じたい。
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