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純粋な視線
須賀さんが手にしたまかないを机の上に置こうとして固まり、俺を見る。
え?
「ちょいちょいちょい。まさかって何のまさか!?」
「は!? 山登、それはいかんぞっ!! なに幅広げてんだっ!! おまえもう成人したんだから犯罪になるぞっ!? ちょ、迪也おまえ18になってる?」
「あのねえ、店長っ!」
迪也はやっと自分の発言から何を想像されたか理解したらしく、顔を真っ赤にして顔の前で大きく手を振った。
「な、違いますよっ! もうっ!! 何言ってんですかっ!!」
「いや、だってそんな真剣に『山登さんカッコイイですー』とか言われたら、なあ?」
「なあ、じゃねえし。セクハラだ。セクハラ。迪也、訴えていいぞ」
「もうっ! 僕、こんなだから女の子とは縁もないしっ、憧れるっていうか、うらやましいっていうか、そういうのですっ!!」
確かに見た目で迪也から「かっこいい」って言葉をひねり出すのは困難だろうとは思う。
大きいお姉さんに可愛がられる若年アイドルって感じの子だ。
「山登はあれだわな。画像つきの店舗情報なんて載せて、袖にした女が復讐にくるのを恐れてんだよな」
「須賀さん、俺はね、恨まれるような付き合いはしてないの」
「俺、こいつが高校の時、女の好み聞いたことあんだけどさ、なんて言ったと思う?」
店長が下種な表情で須賀さんと迪也を見渡すのに、溢れ出る嫌な予感。
「頭と尻の軽い、胸の重い女の子、だって」
「うわ。山登サイテー」
「はは……なんか……オトナだったんですね……」
いかにも純粋な迪也の視線が痛い。
周りが周りだから自分がそこまで汚れてる人間だって思ったことなかったけど、迪也を前にしたらなんか自分の存在がとてつもなく不潔なもんに思える。
「店長ぉー、マジやめてくんない?」
「ま、今も変わってねえけどな」
「変わってますって。つか、あの時だって別にあれは本心じゃなくて、背伸びっす。背伸び。ほんとのとこはね、俺は癒しを求めてんですよ」
癒しと平常心。
ああ。誰かと夜のデートしないとな。
絆と泊まりがけでフェスなんてのは楽しみすぎるけど、えげつない。
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