ダメージの差

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ダメージの差

 フェスは、まあクソ暑さを我慢できるレベルには、良かった。  ただその熱を引っ張るってほどではなくて、ビジネスホテルと旅館の間みたいな宿舎についたとたん、暑さに奪われた体力を実感した。 「疲れた…」 「うん。泊まり正解だわ」 「シャワー先使っていい?」 「うん。寝落ちしてたら起こしてくれ」  とにかく疲労感が半端ない。  おかげで備え付けの狭いシャワー室に消えた絆の、その白い体をはじく水音が聞こえても、兆すようなことにはならずにすんだ。  ただその分、頭を惑わすのは、その体を自由にするオトコ、あるいはオトコたちの存在。  絆は元々貞操観念が緩い……というか、クソくらえくらいに思ってるんじゃないかって節があるから、これまで色々な女の子と関係を持ってるのは周知の事実。  まあ、それは俺もそうだし、絆の夜遊びに対して嫉妬するなんてのは、随分前に放棄したつもりだ。  だから、その相手がオトコに変わったってだけで、本質的には変わってない───はずなんだけど。 「なんなんだろうねー…」  突っ込むのと突っ込まれるのとの違いなんかなぁ。  絆が女の子組み敷いて腰振ってるのと、のしかかられて腰使われてるのとじゃ、やっぱりダメージに差があるもんなぁ。  絆が行為の中だけでも誰かを受け入れるってのがキツいんだ。  トイレでイタしてた時の喘ぎ声は、未だに鮮明に思い出すことができる。  決して女の子とシてる時に出す類のものじゃない、あの媚びるような、生々しい……。  ゾワリと、股間に加わる、例の感覚。  あー、くそ。  情けないことにアノ声を思い出し、色々想像を膨らませながら俺は何度抜いたかしれない。  高ぶってるときは諸々の不都合は忘れて、ただ絆のイメージだけに絞られるから。  けど吐き出したあとの反動が半端ないんだ。  あの声が、他のオトコによって生み出されたもんだから。
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