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マナー違反
「そいつも、山登の、咥えた?」
舌の全面を使うようにして、根元から先端までを舐めあげた絆が、挑むように俺を見上げる。
今にもイキそうな俺は、いきなりの質問がもたらす振動にすら感じ入ってしまい、問われた内容に応えるのにも間を要した。
「…まあ…ね」
それに対して絆は、ふーん、と面白くなさそうに相槌を打ちながらも、手は柔らかに袋を揉みしだき、先走りを舌でねぶりとっては舐めおろすという動作には余念がない。
口内に収まりきらない俺の熱を唇で挟むようにして扱き、吸い上げられたら、本能がもっとと暴れて、腰を押し付けて揺らしてしまう。
「……あ…やば…も…イく……」
漏れた声と俺の腰の動きに、一層絆の動きが勢いづいて、俺はあっけなく達してしまった。
そう。
絆の口の中に。
だって出る瞬間ひきぬこうとしたのに、腰掴んで吸い上げるもんだからさぁっ。
しかも放出してる間にもまだ吸引してくるからさぁ。
「悪ぃ。我慢できなかった……あ、ティッシュ……」
気だるい心地よさに浸ってる場合じゃないとテーブルの方に目を向けた俺の手を、絆の手が掴んだ。
「いらない」
「は?」
「飲んだから。なぁ、咥えるの、どっちが、うまかった?」
あっさりと答え、首をかしげて問いかけてくる絆へ抱く、複雑な心境。
……可愛い…んだよ。
フェラされて嬉しくないわけはないし、精液飲んでくれたってのも、ちょっとした感動だと、思う。
だって、まさか口でしてくれるどころか、飲んでくれるなんて思わなかったし、さ。
でも。
口での奉仕に慣れてるのは、違う男に抱かれた数なわけで。
基本的に絆は性に奔放だって、それはわかってるし、今更だけど。
あー……。
一回出して、プチ賢者タイムってやつか?
冷静になった俺の一部分が、考えちゃいけないところを、つつき始める。
「…そ…ういうの聞くのは、ルール違反」
俺の心情的には、うまくないほうがいいんだけどな。
残念ながら、絆の舌使いは俺のこれまの性経験の中でも上位の上位で、俺は心の中でルール違反を犯す。
初めて口でシたとき、そいつを、どんな目で見上げたんだろう。
きっと、不安な子猫みたいな、顔を、した。
誰?
清澄? 別の奴?
「なんだよ。喜んでくれるかと……思ったのに」
心から愛する相手だ。嬉しくない、わけはない。
体液を飲まれると、受け入れてもらった気になれるもん。
でも、こんな気持ちを味わったのは、きっと俺だけじゃ、ないんだよ……な。
心から愛する相手だからこそ。
今まで感じたこともないわだかまりが、胸に燻り始める。
「……や…だった?」
思ったような反応を示さない俺に、絆が不安げに、泣きそうに、俺を見上げた。
とたん。
その顔に、欲情する。
震える子猫みたいな姿に、出したばかりのはずのそれに再び熱が集まった。
「んわなけあるか」
「……あッ…」
やや強引に絆の腕をつかむと、抱きよせて、犯すようなキスをする。
自分の精液の匂いの残る口づけは苦い、変な味がして。
こんなクソ不味いもんを、嚥下したくれたことはやっぱり嬉しくて。
でもやっぱり。
むかついた。
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