最低な独占欲

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最低な独占欲

 自分はこんなに狭量な奴だったんだと驚けるほどに、絆の喘ぎ、嬌声、表情、どれをとっても俺の心は乱される。  感じやすい身体は、いったいどれだけの男を知ってるんだろう。  俺だって人のことは言えないわけで、それこそ、セックスした人数なんて覚えてもないけど、それを棚上げして嫉妬してる俺は、どんだけ欲深いんだ。  絆と、ただ一緒に居られれば、それでいいと思ってた頃。  ほんのちょっとでもいいから、触れたいと思ってた頃。  その時を思えば破格の状況だってのに。 「あ……あ…あ、やまと……やま、と…気持い、い……ああ」  そんな甘い声で俺を刺激しながら、別の男と比べてるんじゃないかとか、バカみたいに疑心暗鬼になってみたり。  滑らかな肌も、柔らかな秘所も、もう全部、他の野郎が通り過ぎた後なんだとか、思ってみたり。  そのくせ、萎えるなんてことはなくて。  また痛みを感じるくらいに張りつめて。 「…あ……いたっ……」  今まで感じたことのない苛立ちは、荒々しい愛撫にすり替わる。  優しくしたいのに。  心がコントロールできない。  例えば、すんなり出てくるローションや、ゴムに、心が、荒むんだ。  最低な奴。  わかってるけど。 「絆。見ろ。俺を、見ろ」 「ん…見てる…よ。やまと……」  強引に後ろを弄られ、痛みに眉を寄せてる絆。  完全に俺に心を許してるのに、胸が痛んだ。  ああ、くそ。  わかってるよ。  男だろうが、女だろうが、そこは何かを挿れる場所じゃないってことは。  いくら絆が慣れてても、すぐには突っ込めるわけじゃないってことも、だ。 「絆、俺だけだ。俺だけ、見てろ」  なのに強引に腰を押し付けて。先を進めて。  シュンには向けることのできた余裕が、なんで、持てない? 「うん…うん…」  苦しそうに、それでも文句も言わずに従順に頷き、息を整えて、そして、やっぱり、泣きそうに歪む顔。 「…くっ…」 「…やま、とぉ」  掴まれた肩に力が込められる。  早急な挿入の痛みを逃そうとする絆。  狭いそこはまだキツく、挿れてる俺の方が痛いくらいだから、絆の痛みは相当なもんだと思うのに。  そうだよ。  余裕が持てないんじゃない。   痛みに歪む顔を、見たいんだ。  そしたら、初めてのセックスみたいに思えるから。  絆の身体は、誰にも拓かれてないって思えるから。  あれだけ泣かしたくなくて。  ただひたすらぬるま湯で甘やかしてやりたいと思ってた俺は、どこにいったんだ?  くそ。  最低だ。  俺は、最低で、最低で、最低だ。 「…ぅあ」 「……ふっ……」   全てを収まり終えて、詰めてた息を吐き出す。  狭すぎる絆の中はまだ痛いくらい圧迫してくるけど、一番嵩の張る部分が入ってしまってからは、まだ少しはラクになった。  女の子の中よりも熱く、少し硬い絆の中。  気持ちよさを打ち消す圧迫感は、挿れるだけで精一杯で、とてもじゃないけど腰を動かせるような状況じゃない。 「絆……大丈夫か?」  肩にかけるように持ち上げてた足をおろしてやれば、荒い呼吸の絆の身体が少しだけ弛緩した。  ベッドの上、半開きになった唇からせわしい呼吸を繰り返す絆の片側に腕をついて、汗で張りついた髪を梳きあげれば、潤んだ目で俺を見上げてから両手で自分の顔を覆った。 「どうしよ…俺……」  震える声。  泣きそうな顔をしてるってのは、隠してる隙間からでも十分伝わってくる。 「俺、今……山登とセックスしてる……」  この期に及んでまだそんなこと言ってんのかよ。  嫉妬にかき乱されてるところに、そんなことを言うからカチンときた。 「してたらなんだよ」  だからってもう、止められるわけないとばかりに、まだ硬い絆の中で律動を始める。  小さく呻く絆に、まだ動くのは早かったのかもしれないと思ったけど、絆も何も言わないし、俺も妙に意固地になって腰を動かしながら、顔を覆ってる両手を強めにはらって顔の横で縫いつけた。 「嫌なのかよ」  自分にこんな攻撃性があるって知ったのは数ある経験の中で初めてで、なんでよりによって一番大切な相手なんだろうって思ったけど。  大切な相手だからこそ、なんだ。  わだかまり。嫉妬。独占欲。  余裕の欠片も持てない狭量な、器の小さい俺が上から睨みつけるのに。  絆は。  首をふるふると横に振り、泣きそうな表情のまま、微笑んで。  そして。 「………嬉しい。もう…死んでも…いい」  なんて。  もう。  ああ。  俺が、死にそうだ。
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