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間接的行為
最近絆は金曜以外にもよく顔を見せるようになった。
俺は知ってる。
先輩が受験なんだ。
絆は何も言わないけど、あの先輩は絆が俺らに関わることを良く思ってないから、その先輩の目を盗んで来てて、先輩が受験勉強に集中してる間、絆は自由を手にしてるんだ。
でも。
増えたのは、ここに来る回数だけじゃない。
スマホを見てため息をつく姿が増え、それと付随して一時止んでいた女遊びが再燃した。
酒を飲み、スマホを目にしてため息をついては女の子を押し倒す。
そのたびに俺の心は刻まれて、乾燥して、それでも胸に抱いたままの恋は失うこともなく、それどころか一層深く俺の中に巣食っていった。
そんなことを繰り返していくうちに、また季節は変わった。
「お前ら、ホントによく女被るよな」
ある時、カズが話の流れでそう言って笑った。
「好みが似てんだねぇ」
樋口の言葉に、俺は笑うしかない。
だって、俺、ワザと絆が抱いた女の子を抱いてるんだ。
惚れた男が抱いた女。
あえて言うなら、それが俺の好みか。
絆がキスした唇にキスをして、絆が弄った胸にむしゃぶりついて、絆が挿れた場所へ突っ込み、擦りあげて吐き出す。
絆が抱いてからできるだけ間を置かずに女を抱くことで、俺は間接的に、絆を犯してるんだ。
最低で変態的。
わかってるけど、そうでもしないと、とても絆のそばで平気な顔でいるなんてこと、できやしない。
そうやって他で欲を処理して、絆が少しでも警戒心も猜疑心も持たないように、細心の注意をはらったつもり。
だから絆には、セックスを覚えてからの俺は、性に奔放な、束縛されることを嫌う奴って思われてることだろうさ。
そうやって過ごしてきた日々に訪れたのは、最大のチャンスか悪魔の囁きか。
高校二年生最後の月に、それはやってきた。
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