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ショッピングモール
「なあ山登、トマはやっぱ黒が似合うけど、ちょっと地味だよな」
「パスケースなんて何でもいいだろうよ」
「はあ!? 初めての電車通学だぞ? 下手したら三年間持つんだぞ? はっ、これ。やっぱセキュリティー面も重要だよな!? ……はああぁ、ドキドキする。痴漢とかにあったらどうしようっ」
「おまえは母ちゃんか」
おとーと君はジンナ君になり、今はトマと、呼ばれるようになっていた。
そんなトマが無事高校に合格した祝いの品を求めて、最近オープンした大盛況の大型ファションモールに出向いたわけだけど、さっきからもう絆がうるさいうるさい。
「あれが黙って尻触られてるタマかよ」
尻触られてるタマ。
しかしまあすげえ言葉だな。
それをエロいって思ってしまった俺は、もうすっかり男同士の行為を映す動画でもおっ勃つ体になってた。
「大好きな絆さんの選んでくれたもんなら何でも喜ぶだろー。つか、俺腹減った。まだかかるなら先に飯食わねえ?」
「はあ? ほんと冷たいね、山登。可愛いトマを祝おうって気持ち、お前にはないの?」
2つのパスケースを手に、プンと頬を膨らます絆の方が可愛いよ。どう足掻いても。
「俺の誕生日とか超適当なくせに」
「えー、だって山登は可愛いくないもん」
「そりゃどうも。つか、トマのこと可愛いとか思ってんの、絆だけだからな。あいつ最近、俺たちには超生意気」
「それは山登たちがふざけるからだろ」
おまえのことが大好きだからだろーよっ!
「とにかーく! お祝いの品は今日中に買えばいいけど、減った腹を満たすのは今だ。夕方きたら絶対店混むし。……あ、沓守っ! 三田!」
「ん? また知り合い?」
「同じ学校」
沓守と三田が人の間を片手を上げて早足で来るのに俺も手を上げて応える。
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