アクセサリーショップ

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「おい、山登っ! 可愛い子連れてデートか」  フード付きのダップリとしたパーカーは、この頃めっきり痩せた絆の体をさらに華奢に見せ、挙げ句最近180センチをマークした俺と並んでたら、対比で一層小さく映る。  緩やかなパーマをかけた茶髪は襟足が肩に掛かるほどで、だめ押しの白い肌と赤い唇は、遠目にゃ完全に化粧した女子だ。  もちろん俺的には可愛い子連れてデート気分だけど、まあ、無難に返答しなけりゃなるまい。 「いやいや。男だから。絆。バンドのギター」 「どーも」  少し頭を下げる絆は、女の子に間違えられることなんて頻繁にあるから、もう今更気分を害すこともないみたいだ。 「俺らさっき榎本と彼女とも会った」 「マジで? 俺も男バスの奴らとか、木下とかと会った」 「やっぱオープンしたてだから、被るよな。じゃあな!」 「おお」  立ち去る二人の背中を見送りながら、絆が肩をすくめた。 「山登の知り合い、会いすぎ」 「まあー、学校のテリトリー内だからなぁ」 「何食う?」  なんとなく買い物気分を削がれたらしい絆、やっとレストラン街へ足を向ける気になったようだ。  こりゃ気が変わらないうちに向かわねば俺の昼飯は晩飯になってしまうっ!  道中の店でまた目移りしないよう、メンズ系のショップの前ではそれこそ必死で、エロホテルに口説く男の如く、下手に下手に、顔色を伺って話しかけ続けた。  だから──。  もう後少しでレストラン街ってとこの、女子向けのアクセサリーショップは無警戒だった。  だって、そんなとこにトマへのプレゼントはないと思うだろ。  だから、そのカップルで賑わう店を絆がガン見したのはまるっきり予想外だった。  それは一瞬だったと思う。  歪んだ表情が気のせいだって思うほどの短い時間。  次の瞬間には、既に俺に背を向けていた。 「あれっ、コチュジャンウドン頼んどいてっ。俺、便所っ」  レストラン街の入り口、うどん屋の垂れさがった宣伝幕を示すと引き止める間もなく、絆は駆けだした。
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