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冷たいソファー
「……どんな生活してんだよ…」
冷蔵庫の中をあけたら、酒と水とプリンと調味料。
冷凍庫にはアイスと、冷凍のパスタとグラタン。
シンクはしばらく水を流した形跡も見えない。
背中に感じる、服越しでもわかる骨骨しい体に、そりゃそうもなるだろうと、ため息が漏れた。
ただ、いくら華奢な高校生男子とはいえ、その虚脱した体を、俺だって決して楽勝で背負ってるわけじゃない。
感慨にふけるより、まず絆を背中からおろすのが先だろう。
「二階は無理だから、ここで勘弁しろよ」
絆の部屋は2階にある。
あの急な階段を登る気力も体力もなかったから、リビングのソファーに、そっと背中から下ろした。
そのとき、頬がソファーの背に近づいたわけだけど、冷たい空気にさらされていた白い革のソファーからは、なんでか室温よりも冷気を感じる。
背中から失われた絆の熱のせいで、余計それが冷たく思えたのかもしれないけど。
「……んぅ…」
絆の喉から、漏れる声。
妙に色っぽいとか感じたのは、距離のせいだ。
だって、背中にいたときに絆の腕は俺の首に回されてて、そんで今、絆をソファーに下ろした時点でも、その腕は俺の首に回ったままで、言うなれば抱き合ってるのに、近い。
……あれ?
やばいかも。
今の今まで背中に居て、それこそケツに手を回してた相手。
酔っ払いの茹でダコってのが念頭にあったからかもしれないけど、直接的な、不埒な思いは浮かばなかったのに。
横たわらせるのに、ちょっとでも衝撃を減らそうと必要以上に近くなった距離は、俺の欲求を呼び醒ます。
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