冷たいソファー

1/1
前へ
/216ページ
次へ

冷たいソファー

「……どんな生活してんだよ…」  冷蔵庫の中をあけたら、酒と水とプリンと調味料。  冷凍庫にはアイスと、冷凍のパスタとグラタン。  シンクはしばらく水を流した形跡も見えない。  背中に感じる、服越しでもわかる骨骨しい体に、そりゃそうもなるだろうと、ため息が漏れた。  ただ、いくら華奢な高校生男子とはいえ、その虚脱した体を、俺だって決して楽勝で背負ってるわけじゃない。  感慨にふけるより、まず絆を背中からおろすのが先だろう。 「二階は無理だから、ここで勘弁しろよ」  絆の部屋は2階にある。  あの急な階段を登る気力も体力もなかったから、リビングのソファーに、そっと背中から下ろした。  そのとき、頬がソファーの背に近づいたわけだけど、冷たい空気にさらされていた白い革のソファーからは、なんでか室温よりも冷気を感じる。  背中から失われた絆の熱のせいで、余計それが冷たく思えたのかもしれないけど。  「……んぅ…」  絆の喉から、漏れる声。  妙に色っぽいとか感じたのは、距離のせいだ。  だって、背中にいたときに絆の腕は俺の首に回されてて、そんで今、絆をソファーに下ろした時点でも、その腕は俺の首に回ったままで、言うなれば抱き合ってるのに、近い。   ……あれ?  やばいかも。  今の今まで背中に居て、それこそケツに手を回してた相手。  酔っ払いの茹でダコってのが念頭にあったからかもしれないけど、直接的な、不埒な思いは浮かばなかったのに。  横たわらせるのに、ちょっとでも衝撃を減らそうと必要以上に近くなった距離は、俺の欲求を呼び醒ます。
/216ページ

最初のコメントを投稿しよう!

213人が本棚に入れています
本棚に追加