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本当のファーストキス
相乗効果のような、背中に感じるのとは違う向かい合わせのその熱は、俺の理性のタガをグダグダにするには十分だった。
「絆……」
ほんの少しだけ。
どうしても。
どうしても逆らえなくて。
息をつめ、曖昧な意識の絆の唇に、微かに自らの唇を触れさせた。
柔らかい。
その唇は。
なんて甘美で、なんて切ない──。
キスって、触れただけでこんなになるものだったのか。
ああ。
息もできない。
ささやかな筈のそれは繊細な感覚をピリリと刺激して、唇を浮かせた後も残された、ザワザワとした感覚は脳へと更なる快感を要求する。
欲しい。
この唇を、もっと味わいたい──。
これまで、絆が触れたもので満足してたのに。
本当に欲しいものがこんな風に晒されてしまったら。
ああ。
この唇を貪って、飢えを、満たしたい。
頼む。
逃げるなり、嫌がるなり、してくれ。
じゃないと俺……。
「んん…」
欲望に忠実なのは、どうにもお互い様。
俺の逃げ腰のキスは絆を苛立たせたらしい。
次の瞬間回された腕に力が込められ、強く、その唇が押し当てられた。
それで焼き切れない理性があるんだとしたら、そいつは不能だ。
「どこにも……いかないで……。俺を…ひとりに…しないで……」
唇のつなぎ目から零れる熱と、それを上回る悲しみ。
俺は今、絆の寂しさでほつれたとこに、つけこんでる。
そうは思っても。
到底、止められなかった。
焼き切れた俺の理性が新たな細胞で繋がる気配を感じながら、せめてそれまではと、感情の赴くままに舌をこじいれ、絡ませ、濡れた音に煽られて、ドロドロに混じり合うような、キスをした。
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