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ただひたむきに
「よす」
合コンの帰り道、声が聞きたくてたまらなくなって、絆に電話をかけた。
「よ」
「髪染めたんだな。小出さんがSNSにあげてた」
小出さんはライブを通じて仲良くなった美容師さんで、最近俺たちは小出さんとこの美容院に通ってる。
その人が撮影した絆は髪を黒く染め、短くなった襟足がワックスで浮かされてるのが、やたらと可愛かった。
「ああ。真面目そうに見えるだろ?」
「んなわけ。真面目なやつはワックスでいじらんのよ。まあ、でも、似合ってるよ、黒いの」
「そりゃ、元が良きですから」
ごまかしきれない照れの滲む声に、表情が浮かぶ。
たまんないよなぁ。
絶対可愛いもん。
例え表情が浮かんでも、声を聞いたら本物を見たくてたまらなくなった。
やっぱクシャクシャにしたいのは絆だわ。
会いたい。
すげえ、会いたい。
「なあ、今から家行っていい?」
「は? 急だな。つか今から来ても、終電なくなるだろ」
「ん。泊めてくれよ。今日、合コン行ってたんだけどさぁ。疲れた」
「持ち帰んなかったんだ」
「うん。ハズレ。親には今日外泊するって言ってあったのにさ。帰ったらハズいし」
「いいけど、ハーゲンダッツ買ってこいよな」
「了解」
どうでもいい女の子に貞節を装って、好きな奴にわざわざ女の子と遊んでるアピールするって、何だろうな。
けど。
なあ、絆。ハーゲンダッツが何味か聞かなくてもわかってるのなんて、俺くらいだろ?
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