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ご褒美か試練か
「ま、きついけど二人で寝れないこともないだろ」
「へ?」
「ごろーん。へへ。俺、奥もーらいっ。おまえ。そっちな」
妙な擬音を口にしながら広げた毛布の上に転がる絆が、半分あけたスペースを目で示した。
へ?
「あ、ちょ。座ってる間に毛布、かけてっ」
「あ、はい」
うわ。うわ。うわ。マジか……。
神様っ!!
これって、ご褒美?それとも、試練?
「おじゃまします」
「おう!」
近っ!
うーわ。
添い寝とかっ、添い寝とか添い寝とか添い寝とかっ!
もう、ちゅーしていいすか!?
「な、ほら、寝てみると、海、だろ?」
俺の心の叫びなんて露知らず、絆が手をあげて頭上を示す。
いや。
俺、それどこじゃないんですけど……。
ドキドキとやかましい心臓を無意識に手で押さえながら上を見た。
「おわっ! すげえ」
確かに。
絆のいうとおり、巨大な水槽と設置型の水槽に挟まれた場所から上を見ると、天井へほのかに照り返す青い光の効果もあって、ほんとに、小さな魚が泳ぐ海の中で横になってるみたいだった。
「ありがとな。山登」
「おう。まあ、もらいもんのチケットだけどな」
「水族館がこんな面白いと思わなかった」
「おう」
深呼吸しようか。
いや、それは怪しくないか?
けど、どうにか落ち着こうぜ、俺。
そりゃ体は当たってるけども。けどもけどもけども……。
「明日、日の出みえるかな?」
「晴れそうだから、起きれたら見えるだろ」
「見るっ! 絶対見る! 夕日綺麗だったしっ! そんでそのあと、水槽の裏側ウォッチングツアーも行くっ!! もっかい餌やりするっ」
「はいはい。起きれたらな」
まるで中学の、あの頃に戻ったみたいな絆の姿に、嬉しい気持ちの反面、そういえば俺はあの頃から練乳のアイスだのバナナだのを食べさせてはセクハラ妄想に及んでいたなーと、自分の変わらぬ変態性に、なんとも複雑な心境だった。
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