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冒険のお手伝い
「シュンちゃん、悪い。その子、俺の連れだから」
超美形プッシャーのシュンが百合に纏わりついてるのが見えて、慌ててその体を抱き込むように割って入った。
「そーなのぉ? ヤマトの彼女じゃ、しょがないねぇー。じゃね。ヤマトー」
すっかりキマッてるらしいシュンは、瞳孔が開いてた。
立ち去る背中を見送ってから、肩を抱いたまま、百合に少し怖い顔をしてみせる。
「だから駅で待っててって言ったのに。……あの子、お薬屋さんなんだ」
なまじ顔が綺麗だから、それに引っ掛けられて薬に漬けられた女の子の数は少なくない。
「くすりやさん?」
「体に良くない薬をね。関わっちゃだめだよ?」
百合は肩を抱いたままだった俺の胸に手を添え、怖かったんだろう、若干潤んだ目で俺を見上げると、コクリと頷いた。
「それと、他の男をそんな目で見ちゃだめだよ。彼氏がヤキモチやいて火事になるから」
指先で鼻の頭をチョンとつつくと、百合は恥ずかしそうに俯き、また小さく頷く。
「じゃ、行こうか。ここら辺りは危ないから、離しちゃダメだよ?」
百合の手をとり、腕を組むように仕向けたら、百合は素直に腕を絡めてきた。
近い距離。
百合がちゃんと、俺を「男」だと思ってるのが、触れる体や間の取り方でわかる。
冒険をしたいウブなお嬢さんてとこなんだろうな。
クラブに行ってみたいという百合を連れて行ってやる為、百合には塾に行くと嘘をつかせてバイト後に落ち会うことになった。
地下にある店の入口には若い男女のグループが何個かあって、その中にいた顔見知りと言葉を交わす。
「あれ? 久しぶりじゃんね。あれれ? 今日の女の子、ずいぶんカテゴリ違うねぇ」
「いよいよガチ彼女?」
「違います。彼女には彼氏がいるの。つか、俺がガチ彼女連れてきたら、そういうの言うの、止めてよね。人間性誤解されるから」
「されないよぁ。まんまだもんなぁ」
「そうそう」
「うるさいなぁ。そっちも今日ここ入るんでしょ?またね」
早々に話を切り上げてビルの中のエレベーターに乗り込むと百合が友達? と聞いてきた。
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