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甘く溶ける口付け
「彼氏は、君のここを、まず指で弄るの? それとも、舌で舐めるの? 右から? 左から?」
「そんなの…わかんない…はっ…ん」
絆はこんな風に、目尻を赤く染めて首をのけぞらせて、感じたのか?
「教えて。彼氏がどんな風に君を愛したのか……」
絆が受けた愛撫の全てを、俺に教えてくれ。
「彼は、君に聞いた? ここがいいのか……って?」
「あぁっ…あぁっ」
開発された乳首が、あいつがここを弄ったんだって教えてくれる。
絆、お前はここで感じるの? だとしたらいつから感じた? 最初から? それとも、何度も弄られてる間に?
───なんども。
は。くそ。何度もって、何度だよ。
お前は何度、アイツに抱かれたんだ。
何度、心ごと、許したんだ。
「はんっ……」
尖らせた舌先で乳首の周りを舐り、ワザとイヤらしい音を立てて吸い上げる。
「ぁああん…」
百合は目を閉じ、シーツをギュッと握っていた。
俺はツンと尖りきった左の乳首を弄りながら、含んで舐めころがしていた右の乳首から首筋へと舌を這わせる。
所々音を立てて唇を押し付けながら耳まで這い上がり、耳殻を食んだ。
耳に舌を突っ込めば、甘い喘ぎとともに百合の体が震える。
「彼は、こんなこと、した?」
吐息を注ぐように言葉にすれば、百合はコクコクと頷いた。
「彼は、こうやって、どんなことをいうの?」
「好……きだって…」
キュッと、心が縮れる。
お前も、言われた?
好きだって。
そして、お前も、返したの? 俺もって?
好きだ……って。
怒りに乱れそうになる心に、一度グッと目を閉じる。
絆が、切なくも艶めかしい表情で、アイツに体を開き、アイツの愛撫に、あの愛らしい口から淫靡な息を漏らし、甘い声を、上げていたんだと思えば。
「悔しいな」
本音が漏れた。
俺の知らない絆をトレースしても、絆に近づく訳じゃない。
知らない絆に気づかされる度、胸が抉られるってわかってる。
それでも、止められないんだ。
「キスは……止めておくね」
頬に鼻先を滑らせ、彼女の唇に指を這わながら、唇ギリギリでそう囁く。
キスは、いらないんだ。
だって、もう知ってる。
忘れることのできない、あの甘く溶ける口づけを、俺は、知ってるから。
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