黒い感情

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黒い感情

 でも、だ。  何回も清澄に抱かれた百合は、生のセックスを知らなかったんだ。  そりゃね、まだ学生だもん。いくら婚約してるからって、さすがに子供は早い。  ただ、中出しはともかく、生での挿入くらいはあったと思ったからさ。  だって清澄さん、ゴム使わなかったろ。  男友達と遊んだだけの絆を殴るくらい、生のセックスに、こだわってたんだろ?  絆の中に、何度も、何度も、何度も、何度も、吐き出したんだろっ!  俺の絆に。  俺の。  俺の大事な、宝物を、都合のいい捌け口にしやがってっ!  ───だから。  ぐるぐるうずまく真っ黒な俺の感情は。  あんたの未来の奥さんの中に、吐き出されたんだよ?   ベッドサイドの棚にある、倒された写真立てを起こせば、そこには百合と笑う、さわやかな、未来ある若者って感じの笑顔の男。  未来の選挙ポスターには、そうやって映るんだろうな。  傷つけた奴なんて、一人もいないって顔してさ。   なあ、清澄さん。  絆をトレースしてたら、なんか俺、途中であんたとヤッってるみたいな気持になったんだわ。  あんたのことばっか、考えてさ。  新進気鋭の好青年議員さん。  その横で楚々と立つ奥さんは、あんた以外の男に精液ぶちまけられて喜ぶ、そんな女なんだって。  この先テレビにでも映ったら指さして笑ってやるからさ。  それまで。  つまんないことでつぶれんなよ。
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