破綻した感情

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破綻した感情

 お姉さんが嫁に行って、3人だけが住むってのには無駄に広い家。  とりあえず階下に降り、あたりをつけたシャワールームから出てきた百合にバスローブなんてもんを渡され入れ違いで風呂を借りる。  なんとまあ、サウナとジャグジーがあって驚いた。  ジャグジーとか、絶対盛り上がるし。  バスローブとジャグジーなんて、セレブ定番エロだろ。   シャンパン片手にイチャイチャとか。  やってみてー。  ちっちゃい泡をまとう絆の、濡れて頬に張り付いた黒髪を梳いて、キスして。キスして。キスして。  はは。  たまんね。   妄想力と、嘘だけは立派になってくわ。  自分に苦笑しながら薔薇の香りのするもんであっちゃこっちゃ洗ってからキッチンに向かうと、そこもやたら広くて、ちょっとした料理教室でも開けそうなフルフラットの対面式キッチンだった。  綺麗だけど、ちゃんと人の生活を感じられる、暖かい空間。  おのずと絆の家の、埃を被ったオーブンが思い出される。    絆が失ったもの。  欲しかったものを、当たり前のように持つ百合。  そしてそんな絆の存在を知らないこの子に罪があるわけじゃない。  ないんだけどね……。  
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