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「さぁ、飲め! 美味いぞ! とっておきの赤ワインだ!」
「ありがとう」
アナベルはグラスを手に取り、香りを確かめた。
(ん? くさっ……)
アナベルはライオネルをチラリと見た。
「これ? ワイン?」
なぜか吹き出す国王陛下。
「そうだ!」
「?」
せっかくの誕生日プレゼントなんだからと、アナベルはくさいのを我慢して、思いきって口の中に入れた。
(──!?!?)
口の中に広がる苦味、渋味。なんだこの味は!?
「おえっ!」
不味すぎて全身がこわばる。顔も今までにないくらい歪んだ。
国王陛下が爆笑している。
「あなた、笑いすぎよ!」
ライオネルと国王夫妻の笑いが食堂に響いた。その場にいるスタッフも笑っている。
「アナベル、きみが今まで飲んできたのはワインではなく、ジュースだ。それが本物のワインだ」
「えぇ────!?」
「悪い子ねぇ。だめなのよ、二十歳になる前に飲んじゃ」
「はい……」
年齢を知っている国王夫妻の前では、お酒を所望しなかったのだが……。ライオネルが話したのだろうか。
「赤ワインはだめでも白ワインがあるし、カクテルにする手もある。これから色々と口に合うものを試していくといい」
「陛下、ありがとうございます」
ライオネルの家族はアナベルにワインとジュースの違いを気付かれないよう、食事の時も色々と気を遣ってくれていたそうだ。
(本当に優しい人達だ)
アナベルはこの家族が大好きになった。
「ですが、しばらくはジュースで十分です」
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