肖像画と遺言書

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 仕事が終わったアナベルは、別邸に戻って遅い夕食をとっていた。キースはまだ戻って来ない。 「キース、遅いわね」  アナベルは今日もライオネルとお風呂に入った。ライオネルは若干のぼせぎみだが、心配なさそうだ。アナベルの持つにんじんを元気に追いかけている。 「どうぞ」  さる男がを出した。 「美味しい!」  だらしなく座っているアナベルは、ワインを一気に飲んで、ぷはっと息を吐いた。   「アナベル殿はワインを嗜むのか?」 「そうだよ。一日の終わりはこれで締めないとね! でも、おかしいのよ。わたし、全然酔わないの。お酒に強いのね、きっと」  背後でさる男がキキッといたずらっぽく笑った。 「ライオネルさん、どうぞ」  さる子がライオネルにカット野菜の盛り合わせを出した。たんぱく質として鶏肉が乗っている。 「ありがとう……ん?……さる子殿! 手を怪我している。大丈夫か?」 「大丈夫です。少し切っただけですので。お優しいのですね、ライオネルさん」  さる子の頬がぽっと赤くなので、アナベルはもしや!? と思った。 「惚れた!?」 「そ、そんな、そんなすぐに惚れません! ライオネルさんはお優しくて素敵ですが……」 「惚れかけてるじゃん!」  アナベルはニヤニヤしながらさる子をからかった。 「やめてよ! アナベル!」  照れながら怒るさる子。 「ごめん、ごめん。とにかく傷を診せて」 「ん?」  アナベルはさる男のキーと悲痛な声が聞こえた気がした。
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