140人が本棚に入れています
本棚に追加
アナベルは、王都まで馬車で五時間かかるクソ田舎に住んでいる。
アナベルの継父(以下義父)、マニフィコ・クローチェが経営するこのロッシ領は、自然が豊かで農業が盛んだった。肥沃な土地が広がり、周辺の山々から涌き出る水は豊富。食べ物も水も美味しい。
元はアナベルの父親の領地だったのだが、三年前に実母が他界してより、義父と義姉二人に家も領地も乗っ取られてしまった。
(見てろよ、いつか追い出してやる)
アナベル・ロッシ。十九歳。
雪のように白い肌、美しく艶々のプラチナの髪。大きく形の良い碧い目。薔薇の花びらのようにみずみずしく、血色の良い唇。スタイルだって抜群に良い。
そう、誰もが振り返る絶世の美女だった。
アナベルが生まれた時、美しい物が好きな妖精が加護を与えた。
動物と話せる加護と怪我や病気を癒す加護である。
妖精が人に加護を授けるのは非常に稀であるが、気まぐれにしょうもない理由で加護を授けたりする。
アナベルの場合は『美しい子がウサギさんやリスさん、小鳥さんと話をしていたら可愛いくない? おまけに怪我や病気を治せたら、もうアイドルじゃん!』という理由で授けたらしい。
最初のコメントを投稿しよう!