アナベルと動物たち

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 アナベルは、王都まで馬車で五時間かかるクソ田舎に住んでいる。  アナベルの継父(以下義父)、マニフィコ・クローチェが経営するこのロッシ領は、自然が豊かで農業が盛んだった。肥沃な土地が広がり、周辺の山々から涌き出る水は豊富。食べ物も水も美味しい。  元はアナベルの父親の領地だったのだが、三年前に実母が他界してより、義父と義姉二人に家も領地も乗っ取られてしまった。 (見てろよ、いつか追い出してやる)  アナベル・ロッシ。十九歳。  雪のように白い肌、美しく艶々のプラチナの髪。大きく形の良い碧い目。薔薇の花びらのようにみずみずしく、血色の良い唇。スタイルだって抜群に良い。  そう、誰もが振り返る絶世の美女だった。  アナベルが生まれた時、美しい物が好きな妖精が加護を与えた。  動物と話せる加護と怪我や病気を癒す加護である。  妖精が人に加護を授けるのは非常に稀であるが、気まぐれにしょうもない理由で加護を授けたりする。  アナベルの場合は『美しい子がウサギさんやリスさん、小鳥さんと話をしていたら可愛いくない? おまけに怪我や病気を治せたら、もうアイドルじゃん!』という理由で授けたらしい。
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