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「で、何か言うことは?」
「……すみませんでした」
帰って早々、俺は自室で正座中
目の前には鬼も恐れる程の笑顔の大牙さん
大牙って笑ってる時が一番怒ってるし一番怖い
で、何故こんなことになってるのかというと……
戌井と別れた後、ふらふらになりつつも何とか帰宅し、電気を付けながら独りごちる
「はぁぁ……濃い……濃すぎる日だった……てか、まさか2人からき、キスされるとは……いや両方ともからかわれただけなんだけど……」
しゅるりとネクタイを緩めると共にふとソファに顔を向けると
「に"ゃあ"あぁぁぁぁぁ!?!?」
「うっっっっせ………お前がガチでビビってるの久しぶりに見た……」
「た、いが………ッ!!脅かさないで……!!!」
いやそりゃああんな声も出るよね??
暗闇の自室、ソファに座る顔は怖い大牙
びっくりしすぎてネクタイ放り投げたわ
「……で、何でいんの?」
「合鍵」
「なるほどぉ……」
大牙には1年の段階から寮の部屋の合鍵を渡している
こんな風にフラって来ることもあるし、寝起きはいい方なんだけど疲れが溜まるとたまに起きれなくなるからそういう時は起こしに来てもらう。
あぁ、あと夕飯食べに来たり………あ、忘れてた
「お前が言ったんだろ、晩飯作るって……」
「あー…ごめん、待たせちゃったよな?今作るから……」
「いや、そんなことよりだ」
大牙が好きなものを作るには材料は確かあったはずだけど確認しないと……
しかしキッチンに向かおうとする俺の行く手を阻む大牙
「ちょ、通れな……い………」
ふと大牙に顔を向けると良い笑顔の大牙さん
あぁ………怒ってる
それもめちゃくちゃに怒ってる、やばい、ご飯どころじゃない、急いで怒られる姿勢、スライディング正座をかます
「……心当たりは?」
「……ないです…」
「そうか」
あぁーーーー選択肢ミスったーーー!!
より、にっこり!!爽やかな笑顔!!!!
でも、だって、ほんとに何で怒ってるのか分からない
「はぁ…………誰だ、2人って」
「2人?」
「お前部屋入りながら言ってただろが、キスされたんだろ?」
「あ、あぁーー」
なるほど、確かにソファで待ってた大牙には俺の独り言が聞こえた訳で……
こいつは俺が生徒と密室にいるのでさえ許さない程過保護だから
「俺は気をつけろって言ったよな?」
「う………で、でも手の甲とか額へのキスって挨拶……みたいなものだし…」
「どうせ不意打ちだろーが、お前は危機管理能力があるようでないんだよ」
……返す言葉もない、多少大袈裟かもしれないが戌井がもし唇にキスする気だったら多分されてた。
「大変、申し訳、ございません……」
「はぁ………今更お前に怒っても仕方ねぇ。とりあえず誰か教えろ」
「えっとぉ……」
「あ"ぁ?」
「…………佐久間と、戌井…」
「チッ……また厄介な…」
舌打ちする大牙にピクリと震える
その様子を見て大牙は溜息を吐きつついつもの大牙に戻った
「はぁ……もうお前俺と付き合ってることにしろよ、噂は出てんだし怪しまれねぇだろ」
「忘れた?俺中学の時付き合った後が一番襲われたんだよ?」
「あーー……お前キャラもちげぇし大丈夫じゃね?」
「大丈夫かもしれないけど……やっぱり怖いからやだ」
「ったく………飯食うぞ、後今日泊まってくから」
「!…うん!」
とりあえずお説教は終わりらしい
大牙が動いたのをきっかけに正座を解いて立ち上がる
「いっっっ……」
「は、ちょ、おい!?」
立ち上がったのはいいものの足が痺れて子鹿のようにプルプルと震える
軟弱とか言うな!誰でもなるだろ!?体が落ちなかっただけ偉いと思って欲しい
「た、たいが……たすけて…」
「ほら!大丈夫だから、掴まれ」
ぎゅっと大牙にしがみつくが以前ガクガクと笑う膝。足腰がプルプルしてる
神経が刺激されているのか大牙が身じろぐ度にビクビクと膝と腰が震えてしまう
「んっ……ちょ、たいが……!動かないで…!ぁ……だめ、ビクビクしてるから……!!」
「………お前、言い方…」
「んっ…え?なに……?」
「…何でもねぇよ」
しばらくするとようやく痺れが治まってきた
足が普通に動くことを確かめ、大牙の腕を離す
「……お前、今度からはちゃんと椅子に座れ。それか体育座り」
「はい………」
またまたお説教が始まりそうな中、時計をふと見ると既に時刻は8時になりかけている
「わ、時間やば!ごめん大牙!夕飯作る!」
「おう、頼んだ」
急いでキッチンへ向かい冷蔵庫から食材を取り出す
あ、皆気になってたであろう大牙が好きな物、それはハンバーグ。後エビフライとかオムライスとか………意外かもしれないけど大牙はこういう子どもが好きそうなメニューが好き
ファミレスに連れてったことあるけどお子様ランチに釘付けだった、流石にこの見た目でそれは…ってなって頼まなかったけど、その後家で作ってあげたらめっちゃ喜んでくれた(当社比)んだよなぁ
とりあえずハンバーグのタネは仕込んであるし鶏モモにも下味をつけている
俺もたまーに食べたくなるからね、こういう昔懐かし庶民の味
大牙のご機嫌を取るためにもハンバーグはチーズを入れてチーズINハンバーグにしておこう
成形したハンバーグを焼き隣で揚げ物も始める
合間合間でチキンライスも作って……
「ん、はい完成。大牙様ランチ〜、あ、今は夜か。じゃあ大牙様ディナー?」
かっこいい名前と裏腹に可愛らしいプレートの中身を見て思わず笑ってしまう
「出来たか?」
笑い声を聞いて大牙がキッチンに顔を出す
それ持っていって、と指示を出すと大人しく従ってくれる。既にテーブルの用意はしてくれていたようで俺はサラダを持って席に着く
「はい野菜、ジャンキーなのばっか食べてたら太るし体に悪いからね」
「………おう」
言ったことはないけど実は野菜が苦手な大牙の眉が軽く寄る
案外子どもみたいな好みと反応を見せてくれる大牙は可愛いなって思う
「…なんだよ」
「別に?じゃ、食べよっか。いただきまーす」
「いただきます」
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