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ピピピ……ピピピ……
「……き!………き…ろ!お……!」
頭の奥で目覚ましがなる音と誰か……人の声が聞こえる
誰だろ、…まぁいいか、あぁそれにしても眠い
このままもう一度意識を沈めるのも良いかもしれない
「おい!!志希!起きろ!!!遅刻すんぞ!!!」
大牙……?遅刻って………遅刻、?遅刻…
「学校!?」
「チッ……ようやく起きたかよ!ほら最低限整えろ!!もう行くぞ!!」
時計を見れば既に8時過ぎ、寮とはいえこの広い学園内を移動して教室に25分には入らないといけない
残念なことにこの部屋から教室までどれだけ走っても10分はかかる
「5分で支度しろ!ほら荷物全部入れといてやるから!!」
「わかっ…た!!!」
眠気が残る頭で何とか行動に移す
とりあえず制服を着て、ご飯……いや無理だ
冷蔵庫にあった200mlの牛乳パックを引っ掴んで鞄に放り込む
あとは……
「志希!!行くぞ!」
「あぁぁぁぁ……も、もういいや!すぐ行く!」
いや軽いパニック
やらなきゃいけないことまだまだあるはずだけど時間も無いし思い出せないしで諦めて外に出た
あとは全速力で走る
もうキャラ気にせずに全力疾走したのは許してほしい
いやだって正直分かんねぇだろ、てか忘れてたわ
大牙は言わずもがな速いし、俺だってスポーツは苦手じゃないからそこそこ走れる
何とかチャイムが鳴る前に教室に飛び込んだ
「はぁ……はぁ………っ…セー…フ?」
「あぁ、よく頑張ったな志希」
「はぁ……、大牙が起こしてくれなかったらやば……ゴホッ…あー……しんどい…」
「ほら、お前何か飲むもん入れてただろ、飲めよ」
まだ息が整わず、朝起きてすぐだから喉が乾燥している
未だぼーっとする意識の中で大牙の言葉に従い鞄から牛乳パックを取り出す
「ん………ゴホッ、ゴホッ」
やばい、深呼吸の勢いのまま吸ってしまって噎せた
気管に入りかけたのかより噎せてしまう、何が何だか分からずとにかく苦しくて思わず涙目になる
「お前ら席に…………ってどうしたお前ら…」
「先生、ちょっと俺急用が」
「すみませんトイレ行ってきます」
「あ、もう無理」
「は?っておい!?」
霧崎先生が入ってきたみたいだけど俺はまだまだ牛乳と格闘中
噎せたのを落ち着かせようと飲んでまた噎せていた
「んぐっ……ゴホッ、はぁ……っ」
「お、おい橘……大丈夫か?」
「んんっ……だい、じょぶで……ゴホッ」
「……誰かこの状況を説明出来る奴」
「遅刻寸前で駆け込んできた橘氏がその勢いのまま恐らく朝ご飯として持ってきたであろう牛乳を飲んだはいいものの噎せてしまい、噎せては飲んでを繰り返してる状況ですなぁ」
「……なるほど、どちらにせよこれだけ人が居なくてはホームルームにならん。あいつらしばらく帰ってこないだろう。大事な連絡もない為今日はこれで終わる。とりあえず橘をどうにかしてやってくれ」
以上、とまとめるとすぐに霧崎先生が教室を出る
その頃にはようやく色々と落ち着いてきて周りの状況にも目を向けられるようになってきたんだけど………え、人いねぇ
半分……?いや、それ以下しかいないけど
「橘氏〜、大丈夫?」
「え、あぁ……何とか……それよりこの状況って……」
「かくがくしかじか…っていうか概ね橘氏が悪い」
「えぇ!?何もしてないけど…」
「……お前が悪い。」
「大牙まで…!」
「ほらほらー、橘氏!口調!」
晴人に指摘され、自分のキャラを忘れていたことに気づく
「あら、失礼。ってやだ!アタシすっぴんで来ちゃったじゃない!」
霧崎先生がホームルームを早く切り上げたお陰で時間がある
一応何かあった時の為に学校に置いておいたメイクポーチを取り出しメイクを始める
「……橘氏って案外童顔なんだ」
「こいつメイクでつり目にしてるだけだからな、普段はこんなもんだ」
「へぇー、まぁどっちにしよ美しいのは変わらないんだがwてかオネエの素顔幼いとか萌えるwww」
「ちょっとそこうるっさいわよ、やめなさい気にしてんだから」
こいつらほんと人の気も知らないで……
アイラインを引いてる最中で良かった、危うく拳が出るところだった
「……あら、ビューラーがない。失くしちゃったかしら?ねぇ大牙持ってなぁい?」
「俺が持ってるわけあるかアホ」
ですよねーーー
無くてもいいっちゃいいんだけど、出来るだけ目力を出したいと考えてる俺からしたら割と重要物品だ、まぁもう無いものは仕方ないけど
「お姉様!どうぞ、是非僕のをお使いください!」
「あら、真稀ちゃんいいの?なら遠慮なく借りようかしら。……ってこれあの有名ブランドのじゃない、確かもう廃番になった……」
「きゃあ!流石お姉様ぁ!お詳しいですねぇ!!」
「真稀ちゃんはいつもどんなコスメ使ってるの?」
「えぇっとぉ、僕は〜」
「………女子かよ、いつの間にここは女子校になったんだ」
「………大牙氏、大変喜ばしいことにここは男だらけの秘密の花園()なんですなぁ」
「きめぇ」
女子()トークにおいていかれた奴らが何か言ってるが気にしないでおこう
真稀ちゃんのおかげでメイクはどうにかなったし何かお礼………あ、そうだ
「真稀ちゃん、お礼に良かったら貰ってくれるかしら」
「えぇ!ありがとうございますぅ!これは…クッキー…?も、もしかしてお姉様の…!!」
「手作りだからお口に合うといいんだけど」
「う、嬉しいですぅ!!大事に……大事に食べます!」
キラキラした目でラッピングを抱きしめる真稀ちゃんは相変わらず可愛い
喜んでくれたみたいで良かった
真稀ちゃんに改めて礼を告げ、2人の元へ向かう
「ほら、そこの腐男子。あんたの分もあるわよ」
「なになに〜、橘氏の手作り??嬉しいですがもっとその分他のファンにあげて絡…」
「半分は大牙が作ったわよ」
「何それ尊い、いただきます」
腐男子の思い通りになるのは癪だが昨日仕事手伝って貰ってるからお礼はしたい
途端にヨダレでも垂らしそうな勢いでクッキーを見つめているのは見ない振りをしておこう
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