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「ん、うまぁ!え、めっちゃ美味いんですけど天才か何かか???」
「あら、一応味見はしてたけど成功してたみたいで良かったわぁ」
「え、ほんとに美味しいよこれ!あとハート多くて可愛いですな、流石橘氏」
「ハート作ったのアタシじゃなくて大牙よ」
「……これがギャップ萌えってやつ?」
「馬鹿、さっさと食え」
驚いたようにクッキーと大牙を交互に見比べる晴人の頭を大牙が叩く
大牙のことだから大して力入れてないだろうけど大袈裟に痛がる晴人を見てると何だかつかの間の平和を感じられる
「あ、そういえば橘氏、めっちゃ大荷物じゃん。それ全部クッキー?」
「そうよ、親衛隊の子と委員と……あと今日悩み相談に来てくれた子達のお茶菓子にね」
大きめのカバンに放り込んで来たからやはり目立ってしまうのか、晴人に質問される
そろそろ帰ってき始めたクラスメイトの視線もチラチラ感じるしここは素直に答えておく
近隣の邪魔になったら悪いし
「……今日は戦乱が起きそうな気がするんだけど、大牙氏」
「あぁ奇遇だな。俺もだ」
「?……どうかした?」
「あぁ、いえ……こっちの話。今日もお悩み相談室は凄いことになるでしょうなぁ……転校生が暴れ散らかしてるのもあるけど、手作りお菓子付いてくるとか」
「え、転校生まだ何か問題起こしてるの?」
「問題…というか、昨日橘氏達が会議してる時双子会計が転校生を生徒会室に連れ込んだらしくて」
またあの黒毬藻は学園中を引っ掻き回してるらしい
会議中ということは双子と会計しかいないから………うん、止めるやつがいない
放課後とはいえ人はいる、この話ももう既に学園中に知れ渡ってることだろう
これこらの対応を考えると流石に憂鬱だ
「よりにもよって……ありがと晴人ちゃん、また何かあったら教えてちょうだい」
「もち、あぁ橘氏と大牙氏、今日お昼どうする?橘氏も1回帰ってくるよね?」
「……寝坊したからご飯忘れたわ。大牙、何か作ってくれた?」
「いや、俺だってギリギリまでお前が離さなかったせいで起きられなかったからな」
「あら、もしかしてまたやっちゃった?いつも申し訳ないわ……」
「いい、気にすんな。ちゃんと寝れたならそれでいい」
「大牙……!」
「ちょ、ちょ、待って??え、離さなかった?寝た??デキてたなら先に言ってよ!!!」
「馬鹿テメェ声考えろ!」
思わず叫んだ晴人の口を大牙が急いで塞ぐ
しばらくもごもご言ってたがようやく落ち着いたようで抵抗をやめると同時に手を離す
「せ、説明!!詳しく!!!はい!!どっちが上ですか!?」
「別に抱いてないし……もちろん抱かれてもないわよ」
「あぁ、こいつが寝られない時に添い寝してるだけだ」
「中学からよね」
「あぁ」
「…………なんと言うか、幼なじみって凄い」
まぁ確かに高校生にもなって同級生の、しかも男と添い寝なんて普通しないよな
傍から見たら割とやばい絵面かもしれないなぁ、とふと考える
「ていうかおい志希、お前どっちかだったら俺抱く気なのかよふざけんな」
「はぁぁ?当たり前でしょ?抱かれてたまる……んん"、イイオトコは抱くタチなのよ」
「ほざけ、お前が下だ」
大牙が納得いかない様子で文句を付けてくるが当たり前だろう
誰が好き好んで男に抱かれなきゃいけないんだよ、いや抱くのも嫌だけど
そう答えるとハッと嘲るように否定される
なーーーーにこいつ???逆にお前俺のこと抱ける訳ェ??
駄目だ、この戦いだけは譲れない
「はァァァァァァァん!?面白くない冗談はやめて貰えるかしら!?」
「お前こそ冗談は性格だけにしとけよ」
「クッ……ちょっと晴人ちゃん!!あなたならどっちが上だと思うの!」
「いや俺大牙×志希派なんで……すまんな橘氏」
「こんっ……の!いつか……いつか絶対大牙抱いてやるわ!!」
「おー、返り討ちにしてやるよ。抱かれても文句言うなよ」
「んー、すっっっごい俺的に萌える展開でメシウマなんですが周りがもうキャパオーバーなんでそろそろやめてあげてクレメンス」
「「は??」」
揃って辺りを見渡すと確かに……キャパオーバーというか、死屍累々?
何か倒れたり吐血?鼻血?出したり、こっち拝んでたり泣いてたり惨状なんだけど
「尊…………ッもう人生に悔いはない……」
「2人の初夜見届けるまで死ねない」
「あぁぁぁぁぁお姉様が抱かれてしまうう」
「はよくっつけ」
「…………」
うん、見ないふり聞こえないふり
何か色々と申し訳ないしどうでも良くなってきた
「……なんか、ごめん」
「………あぁ」
「……お昼、教室戻るわ」
「……おう」
大牙も同じことを思ったのか互いに謝ってこの話題は強制終了
あーーー、そろそろチャイム鳴るなぁぁ
俺は昨日同様空き教室に向かわなきゃならないし大牙達も移動教室だから移動しなきゃなぁぁ
阿鼻叫喚の地獄絵図は見ないふりをして、多少申し訳ない気もするが足早に教室を去った
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