崩れ出す日常

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背筋をピンと伸ばし顎を引く。 真っ直ぐ前を見据えて歩き出すと周りが自ずと道を開けてくれる。 昔ある人が教えてくれた。忘れたことは一度もない、俺の1つのおまじない 軽く息を吐き、一歩一歩彼らへと近づく 真っ直ぐに地面に崩れ落ちている親衛隊の子へ向かい目の前に立つと口を開く 「貴方、立ちなさい」 「ぐすっ……お、ねえ…さまぁ…」 「みっともないわよ、早く立ちなさい」 「お、お姉様!この子は……!」 周りの彼の友達であろう生徒が恐る恐ると声をあげるが無視して彼をじっと見つめる 泣き腫らした顔に震えた体、そんな状態でも俺の声に応えゆっくりと立ち上がった 「いいわ。貴方が膝をつく価値すらないもの。堂々と立っていなさい」 「おねえ…さま……」 「あら、可愛い顔が台無しね。ほら、そこの貴方達も酷い顔よ。全員まとめて顔洗ってらっしゃい」 「は、はい…!」 彼を含めた今にも泣きそうな親衛隊達を食堂から追い出す チラ、と不安そうな目で見てくる子にも目で圧をかけ退出させた 俺、怖いお姉様、って思われたくないんだよね 今まで築き上げてきたものもあるし?時には観客は少ないくらいが丁度いいんだよ あいつらのことは完全無視する形で親衛隊達の方を向いていると後ろからいつにも増して硬く冷たい声色が聞こえてくる 「……橘センパイじゃん、何の用?」 「あら、誰かと思えば…浅間ちゃんじゃない。あまりにも不細工な発言をするものだから誰か分からなかったわ」 「はは、酷くね〜?ホントのこと言って何が悪いわけぇ?」 「口調。気安い口をきかないで頂戴。うちのチワワちゃん達でさえ出来ることよ?まさか礼儀作法さえ覚束無いとは…とんだ駄犬ねぇ」 「はぁ?目上の人に敬語使えとか説教するの?たかだか1歳しか変わらないくせに」 「あら、ならせめて精神年齢でアタシを超えてくることね。自分の立場に胡座かいて物事や発言を考えられない、おまけに礼儀のなってワンちゃんは大人しくお座りしておきなさい」 まずは見事に突っかかって吠えてくる会計を黙らせる 言い返してこない辺りまだ自分がやったことの自覚が少しでもあるんだろう まぁ、すっごい顔でこっち見てくるけど こんな小物1匹に気にしてらんないわ 突き刺さる目線は無視して双子庶務に向き直る 「双子ちゃん達」 「な、なぁに……」 「ぼ、僕達何にもしてないよぉ」 「まぁ、自分の仕出かしたことすら自覚出来ないなんて、まさかそこまでとは思わなかったわ。ほんと、あの子達には勿体ないわねぇ」 「な、何でそんなこと言われなきゃなんないの!!」 「僕達、いつも通り遊んでるだけなのに何で光だけ!!」 「あらそうね、貴方達だけだと大した問題ではないわ。貴方達には幸運にも貴方達の性格や気性を理解して見守ってくれる子達がいるもの。」 「じゃあ何で!」 「貴方達だけなら、と言ったでしょう。今回は規模が違うの。貴方達だけじゃない、入れ込んでる人数もそのレベルも違う。全員が貴方達ののように振舞ったらどうかしら?」 双子へ問いかけるとハッとしたような顔つきでお互い顔を見合わせる やはりこの双子は己の…いや、今回は彼らが与える影響の大きさを気づいていなかったんだ 双子自身はいつも通りに振舞っているだけだから …まぁ、だからといって彼らに罪がないわけではない 彼らも1年生とて、生徒会の一員であるならね 「でも、僕達だけじゃ……!」 「あら、分かってるじゃない。貴方達だけじゃないの。だから気づいた貴方達は諌めなきゃならない」 「で、でも!僕達1年生だし」 「表に立つ者にそんなの関係ないわ。貴方達は生徒会…人の上に立つ者としてそれなりの覚悟を持たなきゃならない。その程度の覚悟すら持てないようなら辞めてしまいなさい。…人の下につく方が責任を気にせず遊べて楽よ?」 「い、嫌だ。僕は…僕達は、生徒会で、皆と一緒にやっていきたい…!」 「なら、やることはお分かりでしょう?別に誰も縁を切れとは言ってないもの。友達として適切な距離、時には生徒会として正しい距離を心掛けることね。貴方達を見て変わる人もいるはずよ?」 「…分かった。僕達、頑張るよ。ね、風月」 「うん、羽月。僕達ちゃんと光にも皆にも迷惑かけないようにする」 「素直ないい子は嫌いじゃないわ。双子ちゃん達なら上手くやれるはずよ、アタシも応援してる」 さて、と 双子にも言うべきことは言えたし、幸い彼らも理解してくれた 意思の疎通が難しい、と思っていたが案外理解力はあるしきちんと促せば自分や周りを客観視出来る力もある 双子の行動が変わることで多くの影響があるはずだ これで少しでも俺の仕事が減ってくれたら……いや、無理だな。まだ魔王クラスのボスが残っている …あれ?そういえば、あの空気が読めないどデカい声量が飛んでくると思ってたのにやけに静か……
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