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「はぁ……っ、はぁ…セーフ、かしら?」
全力疾走してなんとか滑り込んだ俺は息を整えながらいつもの席に座る。
「うーむ、ギリギリアウトのような気もするけどおはよう志希氏!」
「そのクソみたいな語感どうにかならないのかしら。せめて橘にしときなさいよ。」
「ひぇ、相変わらず当たりが強いンゴwww
で?で??大牙氏と何話し込んでたん???
てか息荒くて汗かいてる現状完全に事後で萌えが捗るwwwwww」
「ちょっとは自重しなさいよ腐男子」
俺の横でニヤニヤしながら話しかけてくるのは俺のこれまた数少ない友達である水川 晴人(不本意)。
で、まぁお察しの通り筋金入りの腐の民だ。
こいつは高校からの付き合いだが観察眼がとてつもなく鋭く大牙とも仲がいい。晴人にも俺のキャラはバレてるからよく3人で行動したりしてる。周りから見れば結構異色なんだろうな。
「いやぁ、それにしても朝から大牙氏と橘氏の絡みぷまいwww卒倒したりトイレに向かうクラスメイトが後を絶えなかったのに2人だけの世界で気づいてないんだから。いいぞもっとやれwww」
「マジ黙んねぇかなこいつ」
「おっと素が出てるぞい橘氏。注意注意www」
いや殴りて〜〜〜〜〜〜
俺の右手がプルプルし始めたけど膝の肉を抓るだけで留めておいた。
晴人がぎゃぁぁっと汚い声を上げるが無視無視。授業中に殴りかからなかっただけ褒めて欲しいくらいだ。
「ひ、酷いなぁ橘氏!せっかく耳寄りの情報を教えてあげようかと思ったのに!!」
「……何かあったの?」
「ふふふふふ!そう、今日ついに!王道転校生が来たんだ!!ちなみに副会長イベ回収したのは他の同士から確認済みですぞいっ」
晴人が興奮冷めやらぬ様子で王道転校生について語っている。
まぁその興奮を語りたいという気持ちもあるだろうがわざわざ俺に伝えるということは何かが起こるかもしれないと言うことだろう。
てか転校してくる時期微妙過ぎるだろ
1年の春となると問題起こした訳ではなさそうだけどわざわざこの学園に来るあたり控えめに言っても頭がおかしい。
もしかしたら厄介なアンチとか言うやつなのかもしれない。そうだった場合、人の話を聞かない転校生に、その彼に骨抜きにされていく生徒会や1部の生徒。
…うん、新歓前の忙しい時にそうなられちゃたまったもんじゃねぇな。
「ふぅん……まぁ大体言いたいことは分かったわ。…それで?まだ何かあるんでしょ?あたしに何が言いたいの」
「王道転校生と絡んで来てください!」
「嫌よ。どうせ生徒会に一悶着起きるんでしょ?関わりたくないわ。」
「あぁぁぁぁそんなこと言わずにぃぃぃ!!しゃあせめて!せめて今日一緒に食堂に行ってクレメンス!」
「……食堂?また面倒な………そうねぇ、じゃあ今日私が委員会でいない間仕事手伝ってくれるなら考えてあげようかしら」
「くっ……背に腹はかえられぬ!…おーけー分かった、交渉成立だ。ならばせっかくだし大牙氏も誘って3人で食堂だな!」
正直晴人の言う王道転校生に関わりたくないけど起きるか分からない面倒より、放課後の委員会によって処理できない仕事を残す方が面倒くさい。
一応保身の為にBLモノの学園小説も読んだことはあるがオネエに絡む転校生とか見たことないし。まぁ大丈夫だろう。
そんなことよりもう俺も高3なんだから授業をしっかり聞いておかなければ。
晴人との会話を終了し、俺は真面目に授業に集中した。
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