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2階席で耳栓をしていても聞こえてくる程の歓声。どうやら、予想通り生徒会が全員揃って食堂に来たようだ。
晴人の話によると副会長が転校生を気に入ったらしく、そこで彼のお気に入りを見るためにこの場に来るのが王道のストーリーらしい。
そこかしこで叫ぶ声が聞こえる。
会長抱いてー、だったり、双子可愛いー、だったり。本当はあの場に俺も居なきゃなんだろうけど今は俺たち以外誰もいない2階席だし無視で大丈夫だろう。
突然、歓声が悲鳴に変わった。
何事かと目を向けてみると副会長の東雲 怜が転校生に抱きついていた。
「光!やっぱりここに居ましたね!」
「なになに〜?この子がれいれいのお気に入り?面白い格好してるねぇ〜」
「おー!怜!!ん?お前らなんだ!?怜の友達か?」
「あはっ、光くんだっけー?君面白いね!俺は生徒会会計の浅間 昴。いつでも俺の部屋においで?光くんなら抱いてあげるよ?」
「そ、そんなことしたら駄目なんだぞ!そうだ、そんなに寂しいなら俺が友達になってやる!」
「……ふふ、ほんと面白い子だね。」
「お、会計殿がおちましたな。それにしても見事な王道っぷり…ってあぁ!俺のハンバーグ!!」
「いつまでも見てばっかで食べないのがいけないのよ。ほら、大声で喋ってるせいで声は聞こえるんだし早く食べなさい。」
「ちぇー……」
晴人がようやく自分のハンバーグに手をつける。坦々麺食べ終わった俺に対し、晴人は今から食べる。うん、要約すると暇。
暇つぶしに生徒会の騒動でも眺めようか。ウェイターに飲み物を頼んで1階の騒ぎに目を向けた。
「いぬ、い……れ、ん…。しょ、き…。よろ、…く。」
「はいはーい!僕は羽月!」
「僕は風月!」
「「2人で庶務だよ!よろしくね!!」
「早速だけどー」
「「どっちがどっちでしょー!」」
順調に書記、庶務と自己紹介が進んでいき双子のどっちがどっちでしょうゲームが始まった。
2人が転校生の周りをくるくると周りどっちがどっちが羽月でどっちが風月かを当てるというシンプルなゲーム。
「こっちが羽月でこっちが風月だな!」
「せいかーい!すごぉい!3問連続当てちゃったよ!羽月!」
「すごいねぇ風月!会ったばっかりなのに全問正解しちゃった!」
「「光くん大好きー!!」」
転校生争奪戦に双子も参戦したようだ。
残るは生徒会長だけだが……
「…あいつが人を好きになるって、想像つかないんだよなぁ……」
「?…何か言ったか?」
「……いいえ、何でもないわ。気にしないで。」
再び1階に視線を向けて観察する。
絆されていく生徒会を見て周りの生徒はまさに地獄絵図。阿鼻叫喚である。
もしかしなくてもこちらにしわ寄せが来るだろう。あまりに憂鬱だ。
「そこのお前!名前なんて言うんだ?」
転校生が生徒会長に話しかける。
それだけで恐ろしい程の悲鳴が上がり倒れる者までいる。
「お前は転校生だから知らないのか。俺は桐生院 柊斗だ。」
「柊斗か!お前も俺と友達になるよな!!」
「名前を聞いても反応なしか。…気に入った。光、これからよろしくな。」
おーおー会長の親衛隊が限界だ。
確かに桐生院の名前を聞いて反応しない者はこの学園にいないのだろう。肝が据わっているか世間知らずか…どちらにせよ関わりたくはないな。
「おっと、会長イベ起こらないだと!?普通生徒会長が転校生を気に入った、とかでキスするのが鉄板なのに!!いやぁ、非常に残念ですな…」
「こっちからしてみればそんなことされたら親衛隊抑えるの大変だからたまったもんじゃないわよ。良かったわ。まだ彼に常識があったようで。」
「……前から思ってたが橘氏って会長に対してちょっと当たり強いですよね?過去に何かあったんでござるか?」
「別に?そんなことないわよぉ」
「だったらいいんだが……」
あぁ……きゃーきゃーぎゃあぎゃあうっせぇなぁ………
こんだけの騒ぎならもうそろそろ来てもおかしくない。ゆっくり鑑賞しすぎてしまったようだ。
…さて、どうやって逃げ出すべきか。
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