崩れ出す日常

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「……………見すぎじゃないかしら」 ずっと見つめられたまま微動だにしない ぽかんと口は開き、目が大きく見開かれ……いや、ごめん目見えてないわ でもほんと、穴が開くんじゃないかってレベルで見られてて、こっちはこれからラスボス相手に戦う気でいるのにこう来られると…ちょっと困る 「お、前………名前、何だ?」 おぉ、ようやく喋ったと思ったら… 今お前について非難していた相手に抗議や文句ではなく名前を聞く、とか中々だなこいつ ま、生憎易々と教えてやる気はないけど 「残念ね。アタシ、礼儀のなってない子嫌いなの。」 「お、俺が聞いてるんだぞ!?何で教えないんだ!」 「あと人の話を聞かない話の通じない子も嫌いね。関わりたくないわ」 「?…何の話をしてるんだ?」 「あら、大分直接的に言ったつもりなんだけど……はぁ…双子ちゃんはともかく、生徒会がこんなのに入れ込んでるなんて」 「み、皆のことを悪く言うなよ!!悪いのは全部親衛隊だろ!?」 「あら、じゃあ余計アタシの名前なんて聞かない方がいいわよ。アタシ親衛隊だもの」 「え……」 「アタシを口説きたいなら…そうね、蓮様くらいの良い男になって出直しなさい」 あれ、思ったよりすぐに黙っちゃった なんだか呆然としてるけど…まぁ知ったこっちゃない 生徒会と一緒に出させるのも良くないし今回ばかりは確実に教室に送り届けないと… はぁ、中々1年生に知り合いなんていないんだよなぁ ダメ元で辺りを見渡してみる あ、もしかしてあそこにいるの……確か…… 「そこの一匹狼くん、貴方同じクラスでしょ?この子連れて帰ってちょうだい」 「……あ?……元々光を連れて帰るつもりで来てんだ、だがわざわざお前の言うことを聞く気はねぇ」 「まぁ…揃いも揃って礼儀のなってないクソガキばっか。一度躾られた方がいいんじゃないかしら?」 「ハッ……出来るならやってみろよ!!」 うわ、沸点低すぎだろ、殴りかかってきたんだけど まぁ流石にそこまで馬鹿ではないはずだから大方ビビらせたいだけでギリギリで止めると思うけど だけど…残念だね、一匹狼くん。 こっちにも異様に過保護な狼がいるんだな 「おいテメェ……何こいつに手ェ上げようとしてんだ……?」 振りかぶった拳が俺に届く前に大牙によって易々と止められる 「ッ……くっ…そ……!」 あらら〜、大牙顔怖いよ? 一匹狼くんも怖がっちゃって……大牙の手で止められた拳を引き抜こうと頑張ってるけど大牙の方はびくともしない 2歳の差もあるだろうけど2人とも身長とか体格は似たようなもんだし、まぁ純粋に大牙の方が強いしね 「あら大牙、アタシ1人でもいなせたわよ?」 「分かってる、志……お前がこいつより強いことくらいな。だが…遊びでも俺の見てるとこでこいつに手ェ出してみろ。1年でも容赦しねェ…」 「久しぶりに見たわねぇ、黒狼様。せっかくだし一匹狼くん躾てあげたらどうかしら?」 「お前……一緒にすんな」 「あら、言ってるでしょう?くんって。貴方は気高い狼よ?黒狼様」 こうやって俺らが話している間にも一匹狼くんは頑張って抵抗している 可哀想に、顔も凄いことなってるよ 「そろそろ離してあげなさい。可哀想になってきたわ。……さて、一匹狼くん。聞けるわね?」 「くっ…そ……ッ」 「あら、そろそろチャイムが鳴るわ。大牙、あとそこでコソコソしてる晴人ちゃん?行きましょうか」 「どぅえぇぇぇ!?わざわざここで俺の名前出さなくてもぉ!」 「アンタだけ巻き込めないのは癪だもの。さて……貴方達?授業には遅れないように行くこと、分かった?」 「「は、はい!お姉様…!」」 「ふふ、いいお返事ね。宜しくてよ。じゃ、お先に失礼するわ。」 ザワザワしてるオーディエンスの生徒達に授業には遅れないようにと釘をさす 全体からいい返事が返ってきたことだし、まぁ大丈夫だろう あまりこの場に居続けるものでもないし、軽く周りを見ると見知った3年もチラホラいる 悪いがあとは彼らに任せて俺たちは先に出よう 大牙と晴人を連れて食堂から出る やけに生徒会や転校生が静かだった気がするが……気にすることでもないだろう あの後一度も視界に入れてないから知らないけど 「おい志希、上着…」 「申し訳ないけど今は要らないわ。暑いの」 「えぇぇ……もしかして橘氏、まだ怒ってる…?凄い圧……いやでも怒るのも当たり前か…」 「……いや」 2人が何か言ってるが聞こえない どこか遠くに聞こえるようで…… 「おい……おい志希!こっち向け!」 「な、に…ッ!?」 「はぁ……お前、熱あるだろ。デコかせ」 大牙にグイ、と肩を引かれ自分でも思った以上に体制が崩れる 大牙がしっかり支えてくれたけど……熱?熱…確かに体が暑い気がするけど…… 一度自覚してしまうとどうも調子が落ちてしまう どこか頭も痛む気がしてきた 「はぁ……知恵熱みてぇなもんだろ。慣れねぇことするからだ。とりあえず1回休め、寝ろ」 「でも……」 「でもじゃねぇ。とにかく、保健室行くからな」 「……うん」 有無も言わされぬまま大牙に背負われる 自分でも抵抗出来なかった、ということは相当きているのかもしれない やはり大牙の言う通り慣れないことをして疲れたのか少し、眠いし……あぁ…やることは、まだまだあるけど、少しだけ、許して…… 大牙の背にもたれ掛かりすぐに眠りにつく志希 起こさないようにゆっくりと歩きながら、残された2人で会話する 「なんかデジャブ……疲れてたんだね、橘氏。……てか、よく分かったね?俺分からなかったし……」 「こいつ、よく難しいこと考えたりして熱出すんだよ。今回もそれだろ」 「幼なじみエピあざ〜〜。あ、でも大牙氏、ほんとに保健室連れてくの?」 「………俺が、こいつにずっとついとく。熱あるだろうし、とにかくベッドに寝かせた方がいい」 「え〜〜〜、俺氏も……」 「お前は教室戻って担任に伝えとけ。あと志希に相談に来る奴らにも」 「ちぇー、まぁいっか。ちゃんと伝えときますぞ」 途中で2人は別れ、一方は教室、もう一方は保健室へと向かった
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