プロローグ

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プロローグ

放課後の教室。 咄嗟に訊くワタシ。 「なに?」 思わず、怪訝な眼差しを向ける。 瞳を輝かせて彼女、委員長が応える。 「これから、ちょっと私につきあって欲しいの」 その時ワタシは、ハッとして腕時計をみる。 「いけない、もうこんな時間、今日は遅れてるから、また今度」 後ろ髪を引かれる思いで、写真の入った封筒を、鞄に仕舞う。 席を立って、隣に立つ彼女に身体を向ける。 いくらか目線の低い、上目遣いの彼女の瞳を見て言う。 「じゃ、また明日」 「ちょっと…」 彼女の声が背中を追うが、足早に教室を出て行く。 駆け出したいのを堪え、廊下は走らないで進む。 下駄箱の前で、上履きを履き替えていると、委員長の声がする。 「ちょっと…待って…」 顔だけ声の方に向け、そのまま靴に履き替える。 近くまできた委員長が、息をきらしながら言う。 「…あなた…歩くのも…早いのね…」 靴に履き替えたワタシは、身体ごと彼女に向きなおる。 上履きを履き替えようとする彼女に言う。 「どうしたの?」 靴に履き替えた彼女が、一歩、ワタシに近づく。 さっきより、彼女の目線が高い。 思わず、彼女の足下に視線を落とす。 視界に踵の高さのあるショートブーツ。 何か似ている気がする。 ワタシが、いつも履いているものに。 いつものショートブーツを雨に濡らして、今日は、踵の低い黒いローファーを履いているワタシ。 いくらか身長差がなくなった彼女が言う。 「私がつきあうわ、あなたのうちに、お邪魔していい?」 「でも、ウチの手伝いもあるから、時間とれるか分からないわよ」 「それでも構わないわ、ねっ、いろいろ教えるから、写真のこと」 最後の言葉に大きく揺さぶられるワタシ、無意識に応えている。 「いいわ」 「そうと決まったら、早く帰りましょ」 彼女が言って、先に玄関のガラス扉を開ける。 そのままワタシを待つ委員長。 夏の陽射しに透ける夏服の彼女。 頭に閃く、ワタシと変わらない長さの髪。 生地の薄い夏服の長袖に、細い腕と艶やかな身体のラインが透ける。 大半が半袖になるこの時期。 長袖の制服は、寧ろ目立つ方。 年中長袖のワタシには、それなりの理由があるが。 委員長のスカートは、オールシーズンより薄い夏用の生地。 彼女自身が透けている。 キュッとした腰から膨よかなお尻。 そして、また細くなる太腿まで。 一瞬、鏡をみているような錯覚にとらわれるワタシ。 が、自分と違う線の細さと胸の豊かさに、直ぐに我に返る。 視線を外して、彼女に続いて玄関を出る。 少しだけ身長差のある、双子のような姿形の二人。 連れだって校門に向かう。 2回目の夏を迎えた女子の学び舎で。 陽射しの中を二人歩く。
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