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第十六話 アクロバティックサラサラ
7: 20☓☓/07/21(木) 23:15:47.26 ID:23dDyk54
見てはいけないものを見てしまった
8: 20☓☓/07/21(木) 23:17:12.48 ID:JG3mha8t
どしたん、話きこか
9: 20☓☓/07/21(木) 23:18:58.12 ID:23dDyk54
赤いコート着た女がビルから飛び降りてきたのを目の前で見ちゃったんだよ
10: 20☓☓/07/21(木) 23:20:23.32 ID:JG3mha8t
それで、どうなったの?
11: 20☓☓/07/21(木) 23:22:45.37 ID:23dDyk54
走って追いかけてきたから全速力で逃げた
12: 20☓☓/07/21(木) 23:23:23.23 ID:JG3mha8t
もしかしたらまだついてきてたりして
てかそのビル何階建てなの?
13: 20☓☓/07/21(木) 23:32:11.56 ID:JG3mha8t
おーい
「これが、今回の怪異の被害者が最後に残した文章だ」
言いながらジルは私にスマホの画面を見せてきた。
「掲示板?」
「ああ。各地でこういった目撃例が出てるが、未だに足取りが掴めていないらしい」
ジルはポケットにスマホをしまう。
「ああ、また妾を差し置いて二人でいんたーねっとの話か」
静世は、不貞腐れながらケーキを食べる。
「にしてもアクロバティック……なんだっけ?」
「アクロバティックサラサラだ」
「そうそれ。なんか、ふざけた名前だよね」
「巷では『悪皿』とも呼ばれてるらしいな」
ジルはカップのコーヒーを飲み干した。
「『悪皿』か……、不気味でイヤな呼び方じゃ」
「ほら、真理も静世も、それ早く食っちまえ。もうすぐ現れてもおかしくない時間帯だ」
「え、ウソ!」
真理は慌ててパフェをかき込んだ。
「おいおいそう慌てるでない。せっかくの美味しいけーきなのに」
静世は、焦る真理を脇目に一口でケーキを丸呑みにした。
「いたな、あいつだ」
ジルが指差すのは、ビルの屋上に佇む、赤いワンピースを来た女性。
「油断するな真理。奴はクラスレジェンドの中でも相当手強いハズだ」
「……うん」
「どちらにせよ、妾やジルくんにとっては危険な相手じゃ。ここはおとなしく真理の懐に収まるとしようか」
言いながら静世は、真理のポケットの中の封印、通称『ポケ祠』の中に飛び込んだ。
「チッ、静世ばっかりずるいな」
言いながら、ジルは電柱の裏に隠れる。
「……来る」
おもむろにビルの屋上から飛び降りるアクロバティックサラサラ。そして、サラサラの髪をなびかせくるくると回転しながら、腕を組んだ状態で豪快に着地した。
「……ほ」
その瞬間、腕を組んだまま真理に急接近するアクロバティックサラサラ。
「っ!」
アクロバティックサラサラは、腕を組んだまま後方回転飛び回し蹴りを放つ。
「グッ……!」
それを手で受ける真理。その際の反動を活かし、さらに連撃を浴びせるアクロバティックサラサラ。
「な、なんなのコイツ……!!」
腕を組んだまま、足技のみで真理を攻めるアクロバティックサラサラ。
真理はそれをなんとか防ぐが、一瞬の隙に着地したアクロバティックサラサラが、からめとるように足を払う。
「あっ」
ガードが緩む真理。その隙を逃さず、低い姿勢からの蹴り上げを食らってしまう。
「ガハッ……」
真理が空中に飛び上がる。その真理を追うように空中に飛び上がり、さらなる連撃を浴びせるアクロバティックサラサラ。
「あ、あれは……空中コンボ!?」
影で見守るジル。
「ま、まずい!端に追い詰められた!!」
端に追い詰めた真理に、さらに追い打ちをかけるアクロバティックサラサラ。
「……っ!!」
真理は一瞬の隙を突き、強引に姿勢を直しつつ蹴りを出す。
「まずい、ダメだ!!ガードを……」
ジルが気づく頃にはもう遅い。アクロバティックサラサラはそれを膝蹴りでいなし、姿勢を崩した真理にトドメの一撃を放った。
「ぐあああああ!!」
地面に倒れる真理。
「あいつ……只者じゃねえ。真理の暴れを読んで一瞬溜めてからの確定コンボだった……!」
「うっ……ぐぎぎ……」
歯を食いしばり立ち上がる真理。
「マリちゃんよ、聞こえるか」
ポケットの中から真理に語りかける静世。
「し、しずちゃん……」
「こやつ、ジルくんの言うとおり只者じゃないようじゃ。肝心なのは、相手のペースに持っていかれぬ事。よいな?」
「う、うん……」
再び構える真理。
「ラウンド2だ!」
ファイッ!
「うああああああ!!」
今度は一気にステップで距離を詰める真理。アクロバティックサラサラは、ダッシュ攻撃を読んでしゃがみガードを固める。
「はっ!!」
しかし、真理はさらにその裏をかき、ジャンプ攻撃を仕掛けた。
「入った!」
アクロバティックサラサラの顔面に真理の蹴りが入る。アクロバティックサラサラはそれに怯むが、その隙を漏らさず、アクロバティックサラサラの脛に何度も蹴りを入れまくる。
「弱下連打だ!そのまま決めちまえ!」
さらに、アクロバティックサラサラの腰を掴み、バックドロップをお見舞いする真理。
「決まった!」
しかしそれだけでは終わらない真理。瞬時に立ち上がり、ジャンプしながらのポディプレスと、強烈なアッパーを交互に仕掛ける。
「すごいぞ真理!起きハメだ!そのまま持ってけ!!」
ついに地面に倒れるアクロバティックサラサラ。
「早え……流石真理だな」
「まだ来るぞ、マリちゃん」
「わかってる……」
ゆっくりと立ち上がるアクロバティックサラサラ。そして、いよいよ組んでいた手を解く。
「あ、あれは……」
中腰になり、何かを受け止めるようなポーズで両手を広げるアクロバティックサラサラ。
「波動の構えじゃ……!用心しろマリちゃん!」
「ラウンド3!!」
ファイッ!
「……ほほ」
アクロバティックサラサラが、両手をぱんっと合わせ、腰付近に寄せる。
「飛び道具だ!」
アクロバティックサラサラが両手を突き出すと、そこから青い火の玉が放たれる。
「グッ」
真理はそれをガードするも、アクロバティックサラサラは青い火の玉を次々と繰り出す。
「クソッ、飛び道具ばかりで待ってやがる……きたねえ!」
ゆっくりと、徐々に体力を削られる真理。
「まずい、このままじゃ……!!」
刹那、真理の右手が光る。
「はぁっ!!」
「あ、あれは……ジャストガード!!」
瞬時に飛び上がる真理。
「ならぬ!マリちゃん!あれはマリちゃんのジャンプをアッパーで受ける為の待ちの飛び道具じゃ!」
「ッ!!」
空中で無防備な真理に、アクロバティックサラサラのアッパーが迫る。
「……はああっ!!」
しかし真理は、それをさらに光る右手でいなしたのだ。
「く、空中ジャストガード!?」
攻撃の隙を突き、真理は空中蹴りを放つ。これをまともに食らい打ち上げられるアクロバティックサラサラ。
「はあああああああ!!!」
無防備なアクロバティックサラサラに、更に追い打ちをかける真理。
「超秘!銀炎硝弾!!」
大ダメージを受け、大きくのけぞるアクロバティックサラサラ。
「トドメだ!飛燕銀槍!!」
アクロバティックサラサラに向かい一直線に飛ぶ蹴り。
しかし……
「……ほほほ」
それを受け止めるアクロバティックサラサラ。
「か、カウンター!?」
真理の攻撃の勢いをそのままに、裏拳を放つアクロバティックサラサラ。
「まずい!あのカウンターの後隙は僅か3フレーム……!追いつかれる!!」
瞬時に距離を詰めたアクロバティックサラサラにより、怒涛の連撃を叩き込まれる真理。
「がっ……」
「この土壇場でのカウンターからの10連コンボ……なんて精度だ……!!」
「まさに……化物じゃ……」
地面に倒れ込む真理。
「はぁ……はぁ……」
真理も残り体力僅か。既に数ピクセル分しか残っていない。
「ほほほほ」
「あれは……超秘、アクロバティックダンス……!!」
瞬時に距離を詰めるアクロバティックサラサラ。
「ガードで削り殺すつもりだ……ダメだ、勝てっこねえ……」
膝から崩れ落ちうなだれるジル。
「…………まだじゃ!」
ジルを奮い立たせるように叫ぶ静世。ジルはゆっくりと顔を上げる。
「……は」
ジルの目に飛び込んできた光景。それは……
「ああああああああああ!!!」
眩しいほどに光る真理の右手。真理は、アクロバティックサラサラのアクロバティックダンスによる怒涛の連撃を、全てジャストガードでいなしていた。
「なん……だこれ……」
一つでも漏らせば即アウト。そんな状況の中、真理はジャストガードを続ける。
「負けぬのだ。マリちゃんは……負けぬ」
最後の一撃まで、全てジャストガードしきる真理。
「おおおおお!流星爆銀炎硝弾ッッ!!!」
真理の渾身の必殺技。光り輝く右腕で、アクロバティックサラサラの顎に強烈なアッパーを入れた。
「……KO!!」
真理・倉田ウィンズ!!
「……か、勝てたぁ〜〜」
真理はパンパンとズボンの汚れを払う。地面に倒れ込んだまま、次第にアクロバティックサラサラは消滅した。
「なんとかなったね、ジル、しずちゃん」
振り返る真理。
「真理……真理ぃ……!」
「妾は……妾はすごいものを見た!!」
号泣する二人にギョッとする真理。
「な、なんなの」
「この戦いは伝説になる……!」
「ああ、たしかに妾は伝説を目の当たりにしたのじゃ……」
真理は頭の上にハテナを浮かべる。
「い、いや……、私さっきの怪異とゲームしてただけなんだけど……」
真理は言いながら手に持っていたコントローラーを元の場所に戻した。
─アクロバティックサラサラサイバー事件─
死者数不明。
本怪異の、「自己フィールドに入れた者を現実世界の者と認識できなくなる能力」により、正確な死者数は不明。
その他にも、「自己フィールドにいる間、物理法則を無視した挙動」や、「自己フィールドにいる相手を強制的に一対一にする能力」、「自己フィールドにいる者が前後にしか動けなくなる能力」など、非常に強力な自己フィールド能力を持つ怪異であった。
本怪異の対処に当たったハンターは、徒手空拳による格闘術に非常に秀でたハンターであり、この事が本怪異の処理に非常に有利であった事に留意すること。
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