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縺薙≧縺薙≧縺、縺・縺ソ
「あちこちで怪異が異常発生しています!」
「怪異ハンター協会が壊滅した今、怪異を止める人達は存在しません!」
「避難を……ああああああああ!!!」
「人類に……栄光あれ……!!」
全国的に怪異が大量発生した。
どの番組も、この大混乱を報道しているが、もはや逃げ場なんてないはずだ。
……それを、全て理解できている人は、もはや真理達しかいないのだが。
空は不気味な紫色に染まり、雲は血のように真っ赤に染まる。そこから落ちる鉄錆のような雨は、次々と人々を苦しめ殺していく。
「……いよいよじゃな、マリちゃん」
「しずちゃん」
真理は静世の手を握る。
「大丈夫。妾はマリちゃんについて行くと決めたんだ。たとえ何があろうとな」
静世は、震える真理の肩を抱いた。
次第に、世界から光が失われて行く。
多くの人々を殺害し、その血で力を得た怪異。
それこそが、クラスコンセプト、口腔鼓だ。
「……あいつが」
あのツレサリビトを、無数のツレサリビトを、常に生み出しながら、自分の下僕のように、意のままに使役し、人々の血と肉体を回収して行く。その度に力をつけ、次々と事象を捻じ曲げる。
回収された人々は、想像する事すら叶わぬ程の苦しみを一度に全て与えられつつ、その存在その物をなかった事にされていく。
「本当にこれでよかったのだろうか」
静世でさえ、不安そうに語る。
「……絶対に、私が倒すから」
トボトボと、路地を歩く真理。
「マリちゃん」
静世が真理に声をかける。
「……なに?」
「妾はどうやら、一番大切な事を言い忘れていたようじゃ」
ポケ祠の中から、静世は言う。
「マリちゃん。短い間だったが、ありがとう。妾は、マリちゃんに付いていくと決めたのが、この長きに渡る妾の生活の中で、一番の幸運じゃった」
「しずちゃんこそ、ありがとう。いつまでもずっと、友達だよ」
しばらくの沈黙が流れる。
「……妾もそろそろ潮時のようじゃ。すまんが、後は頼んだぞ」
そう言って、ポケ祠は声を発さなくなった。
いよいよ、真理は口腔鼓の前に立ちはだかる。
その圧倒的な存在は、つねに自身の周辺の時空をコントロールし、真理や静世でなければ直視する事すらままならない。
「銀の弾丸よ、力を……!!」
銀の弾丸が、真理に纏わり付くように、持てるすべての力を注ぎ、全身に光を与える。
口腔鼓は、近付いてきた真理に、にっこりと笑いかけながら頭を下げた。
口腔鼓が、莉区干繧堤を峇逶ョ逧に従う↓豁サ縺励◆と。
真理は堪えきれずに、左腕に莉区干を蜿励¢繧�
「ああああああああああ!!!!」
それにより、人類の文明は無かったことになった。
怯まず、再び光を滾らせた左腕と右腕を合せ、聖剣を具現化する真理。
「切るッ!!!」
その斬撃は、口腔鼓の肉体を裂くが、その事象は即座に削除される。
「まだまだ!!!」
激しくぶつかり合う、真理と口腔鼓。
真理は口腔鼓の繝ャ繧ッ繧、繧ィ繝�を受け、概念ごと吹き飛ばされる。
「ぐぼぉっ……おぇっ……」
それにより、人類の存在が無かったことになった。
真理はたった一撃の攻撃で、全身を作り変えられた。
「う……うぁ……あああ!!」
それでも立ち上がる真理。
口腔鼓は、自身の存在を莠秘㈹髴ァ荳ュの薔薇とし
それにより、宇宙が無かったことになった。
「ぅっ……ばはっ……」
爪剥がれ肉削げ落ち臓ねじ切れ、永遠とも取れるほど、幾度となく立ち上がる真理。
「私が……私が……」
そして、世界が無かった事になった。
本来であれば、肉体、魂など、あらゆる概念を持つ存在は、大いなる存在の前でその姿形を保てるものではない。
「倒さなきゃ……いけないんだ……」
それは、真理にとっても同じことである。
「絶対に……す…………」
それでも真理が立ち上がるのは。
それは。
「……………」
「蛟偵☆縺九iッッ!!!!」
それは、真理はもはや真理ではない、人でもない【何か】である事に他ならない。
【何か】と【何か】の戦い。
それは、そもそも宇宙とか、概念とか、時間のような、そういう道理が通る存在であれば、知る意味もなく、知り得ることすら無い事である。
ともすれば、もはやこの戦いは活字で表す事ができなくなる。
先程の戦いより、言語では表現しきれないものについては、言語化できない概念として改変されていたのだが。
この先の戦いは、この世のあらゆる全ての事象達の認識の外。次元の枠にすら当てはまらず、その事実が形として残る事さえもない。
故に、それを理解する意味がない。
「 」
すでに世界は存在していない。
本来であれば、この文章すら存在していなくてもおかしくない。
では、なぜこの文章が今、あなたに届いているか。
「 」
場所も。空間も。何もかも存在していない。
そこに、銀の弾丸は存在する。
銀の弾丸が、照らしている。
この文章を、銀の弾丸が照らしている。
この照らされた文字列だけ、あなたに届ける事ができる。
「 」
だからどうというわけではないが。
でも。それでも。
ただ一つ、残ったものがあるとすれば。
ただ一つ、理解できるものがあるとすれば。
それは。
「……やったな、マリちゃん」
「 」
銀の弾丸は、それでも砕けなかった事である。
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