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最終話 男
「……何度やってもダメか」
男は、舌打ちを打った。
何度も失敗した。
殺すためなら、何でもした。どんな事でもした。
でも、殺せなかった。
「お母……さん……?」
目の前で母親が死んだショックに、呆然と立ち尽くす咲亜。
今なら。今なら殺せる。
「……すまん、咲亜」
男は、金槌を振り下ろす。その瞬間、殴打された箇所が一瞬銀色の光を放つ。
「……銀の……光…………!?」
一瞬見えたそれに、驚きを隠せない男。
「一体なぜ……?」
男は困惑する。
ハンマーで殴打され、額の衝撃によろける咲亜。
だが、すんでの所で持ち直す。
「お前がお母さんを殺したのか」
咲亜は、その幼い目つきに殺意を込めて男を睨む。その幼気な殺気に、一瞬で死を覚悟した男。
「……ああ、間違っていたのは俺の方だったのか」
その瞬間、男の意識はこの世から跡形もなく消え去った。
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