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「あったあった」
薄暗いフロアの奥、ほのかな光を放つ自販機をみつけ近づいていく。
愛飲しているボトル缶でこそなかったが、ちゃんとコーヒーが売り切れずに販売されている。
ダンディなイラストが描かれた缶コーヒーを選んで電子マネーを押しつけると、ピピッという電子音の直後にガタッとミニ缶が落ちてきた。
それを手にもとのフロアへ帰ろうとしたら、どこからかエラー音が響く。
発生源を求め首を回せば、自販機が“666”を投入額部分に表示していた。
――アタリか?
この手の選択時間は長くは設定されていない。
とっさにボタンを押すと、ドサッとミニ缶が落ちてくる。
いつもの自販機が売り切れで、馴染みのないフロアまで迷い込んできたのだが意外な幸運に恵まれた。
少し嬉しくなり、このことをSNSにでもあげようとスマホを構える。
画面の中心に二本の缶を据えたところで違和感を覚えた。
写真を撮るために顔を揃えて並べたコーヒー缶ふたつ。
そこに描かれた男性の眉とモミアゲが、一本目と二本目で微妙に異なっていたのだ。
おなじ自販機から出てきたおなじ商品でそんなことがあるのだろうか?
自販機を確認するが、缶コーヒーはひとつしかなく、押し間違いの可能性はない。
とすると、別の種類が混入していた?
それならイラスト以外の表示もかえているハズだ。
そういえば、このメーカーのアタリ判定は四桁の数字が全部一致したときじゃなかったか?
そう思い至ると666が表示されていたことも意味ありげだ。
とたんに気持ち悪くなり、缶コーヒーを二本ともゴミ箱に突っ込むとその場から立ち去ろうとする。
すると背後から『チッ』と舌打ちするような音がハッキリと聞こえた。
振り返ることなくその場を立ち去ると、元のフロアへ帰る階段を駆けのぼっていった。
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